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KNT-CT、債務超過も資金繰り懸念なし、五輪は想定せずに22年黒字化めざす

  • 2021年5月12日

 KNT-CTホールディングスは5月12日、2021年3月期の決算会見を開催し、売上高が前年度比77.2%減の878億8900万円、営業損失が270億8200万円(前年度16億800万円)、経常損失が167億2700万円(同14億1500万円)、親会社株主である近鉄グループホールディングス(近鉄GHD)に帰属する当期純損失が284億5600万円(同74億4300万円)となったことを伝えた。

米田氏

 コロナ禍の大打撃によって96億5400万円の債務超過となったが、現金と現金同等物が約240億円、コミットメントラインの残高が300億円あり、さらに第三者割当増資で近鉄GHDと取引銀行から合計400億円を調達予定であることから、「当面の資金繰りに懸念はない」(代表取締役専務 経理部担当の三宅貞行氏)という。

 2月に発表した通期業績予想では355億円の営業損失を見込んでおり、実際には約272億円となって約80億円の上振れが発生しているが、これについて代表取締役社長の米田昭正氏は「あまりにも悲観的に見すぎていた」ためと説明。

 具体的には、まず修学旅行が昨年春から秋に、秋から今春に延期となっていた中で、それらが軒並みキャンセルになると想定していたところが少なく済んだという。また、前回予想の発表以降に飲食店への給付金やPCR検査、ワクチン接種などに関する業務を受託したことも改善に繋がったという。

項目2019年度2020年度2021年度
(想定)
2022年度
(目標)
売上高385,36287,889180,000300,000 以上
売上総利益67,28421,972(不明)(不明)
営業利益-1,608-27,082-14,0005,000 以上
経常利益-1,405-16,727-14,1004,000 以上
当期純利益-7,443-28,456-14,800(不明)
※単位:百万円

五輪は見込まず、ワクチン普及は年末想定、22年には黒字化へ

三宅氏

 2022年3月期については、今後のワクチン接種の進展などによって需要は徐々に回復に転じるとしつつも、期間中には多くを望めず影響は引き続き大きいと想定。そのうえで、連結業績予想は売上高が104.8%増の1800億円、営業損失が140億円(130億8200万円改善)、経常損失が141億円(26億2700万円改善)、当期純損失が148億円(136億5600万円改善)と予想した。

 この予想の前提としては、国内旅行について「現在の緊急事態宣言の解除が遅れる」「国内のワクチン普及は年末頃」「需要の回復は近郊から徐々に遠方へ」「東京オリンピックは不透明で見込まず」と厳しい想定。海外と訪日旅行についても「海外先進国のワクチン普及は年末頃」「需要は2022年初頭から緩やかに回復する」との見立てだ。

 セグメントごとの見通しとしては、年間55万人以上を扱う修学旅行は現時点で「まったく予約は減ってなく、進捗は例年通り」(米田氏)の状況だが、コロナの状況次第で延期やキャンセル、コース変更となっていくとの予想。一般団体は「それほど大きな受注はない」状況で、個人旅行は「ほぼ見込んでいない」という。また国内と海外では、国内は「後半に、良くて70%くらいまで戻ってくるか」と期待をかける一方、海外は見込んでいないという。

 このほか販管費では、旅行需要の回復に伴う手数料や宣伝費の増加が見込まれるが、それ以上に希望退職による人件費減や店舗統廃合による賃料減などのコスト削減の効果が現れると想定する。雇用調整助成金は見込んでいない。

 中期的な視点で見ると、現在は2月に発表した中期経営計画の初年度で、2年目となる2023年3月期に黒字化の目標を掲げる。具体的には、営業利益を50億円、当期純利益を40億円とし、最終年度である2026年3月期にはそれぞれ130億円以上、110億円以上をめざす。

希望退職、グループで1439名、子会社の解散や譲渡も

 KNT-CTにとって通算4回目となった希望退職は、3月末時点で1376名が応募。また、グループ会社でも募集に対し63名が集まり、結果として全体の約2割に相当する1439名が会社を離れることとなった。米田氏によると、この結果は「想定の範囲だが上の方」で、これにより店舗整理のスピードも向上。4月末時点で、以前は138店舗あった個人旅行の支店は60店舗となり、団体支店の数も95から86(うち20店舗はバックオフィス機能を持たないサテライト支店)に減少した。

 米田氏は、早期退職について応募者に対し「大変申し訳ない」と思いを語り、「その代わりではないが、過去3回よりも相当良い条件を出させていただいた。再就職支援も今できる万全の体制で設定している」ともコメント。その上で「残った者の責任として、この会社を生き残らせ、社会に貢献できるような会社にしていかなければならない」と決意を語った。

 なお、2021年3月期の連結子会社の数は、国内旅行会社がクラブツーリズムや近畿日本ツーリストの地域会社などを含む15社、海外旅行会社が8社、その他関連事業が10社で、合計33社。これに持分法適用会社が2社加わる形だった。

 この中で、国内に名を連ねた近畿日本ツーリストコーポレートビジネスとKNT-CTグローバルトラベルは4月1日付けで前者を承継会社として合併。また、持分法適用会社2社のうち、NTTデータ・テラノスは4月1日付でKNT-CT・ITソリューションズに商号変更して連結子会社化。もう1社のKNT TRAVEL(THAILAND)と、海外旅行会社に分類される近畿美勝国際旅行社(上海)近畿国際旅行社(香港)は2021年3月末で解散または譲渡となった。(詳細はこちらのファイルの4ページ目)