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持続可能な宿泊施設に向けて攻めの一手ーべっぷ野上本館社長野上泰生氏

  • 2021年4月21日

別府の特徴を活かし長期滞在の誘致を
地域とともに生きる宿泊施設へ

 別府市の中心街北浜にある老舗旅館「べっぷ野上本館」とアパートメントホテル「シンプルステイ別府」。両施設とも、リーズナブルな価格帯でアジアを中心に訪日客から人気を集めてきた。コロナ禍で事態は一変したが、コロナ収束後を見据えて、新たな戦略も進めている。次の攻めの一手とは。今後の別府の観光振興に向けた展望と合わせて、同館代表取締役社長の野上泰生氏に話を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

べっぷ野上本館 社長の野上泰生氏
-「べっぷ野上本館」の概要を教えて下さい。

野上泰生氏(以下敬称略)  野上本館は昭和18年、別府市中心の北浜に、私の祖父が創業しました。当時、別府は戦争中でも景気がよかったようです。野上旅館として創業しましたが、私の父の時代に野上本館に屋号を変更しました。

 部屋数30室の中規模の旅館になります。すべて和室ですが、近年はシングルユースに特化した部屋と、インバウンド旅行者、特に中華系家族のグループ客に対応した6〜7人が泊まれるファミリールームも1階に設けました。最近では、ワーケーションに対応するためデスクも入れています。

 特徴は、低めの価格帯。LCCで訪日する旅行者が気軽に日本の文化を体験できる旅館としてマーケティングをしています。宿泊者は、20〜30代の若者層が圧倒的に多く、常連の高齢者の方もいらっしゃいます。コロナ前のインバウンド比率は6割ほど。夏休みや週末は日本人が増えますが、通常期と平日は訪日客が多く、年間を通じた稼働率は約9割と高い水準でした。

 稼働率を上げて、時期の平準化を図り、従業員に年間を通じて働いてもらうようにしていました。安定的に集客したほうが、経営効率もいい。その代わり平日は料金を抑えています。

 別府ではダイナミックプライシングの先駆け的な存在だと思います。集客については、リアルエージェントとの契約をやめて、オンラインに特化しました。以前はグローバルOTAと日本のOTAが半々くらいでしたが、現在は日本のOTAからの集客が多くなっています。また、コロナ禍で夕食もやめ、素泊まりあるいは一泊朝食を中心に提供しています。

-「シンプルステイ別府」の概要もお聞かせください。

野上 もともとは私の父が建てた16室の賃貸アパートでした。私は滞在型の事業をしたいと思っていましたので、2017年に地域体験のための滞在施設、アパートホテルとして開業しました。簡易宿所として、別府では早い取り組みだったと思います。2019年のラグビーW杯を機に宿泊者数が増加し、今では第二の事業の柱になっています。

 2020年になり、インバウンド需要は消失しましたが、今は日本人のロングステイに特化し、ウィクリーマンションのような形態で販売。稼働はほぼ100%になっています。しかし、Airbnbを中心に一泊3,000円〜3,500円の価格帯で販売しているため、単価が落ち、売上は減っています。もともとスタッフなしのオペレーションで、清掃をアルバイトで回してるだけなので、ランニングコストはかかりませんが、電気代や水道代など管理費が必要なため、賃貸とほぼ変わらない収入になっています。