ポストコロナの旅行流通、NDCへの期待と課題-バーテイルジャパンがシンポジウムを開催
NDCを通じて顧客の感動体験の創出をしていく
シンポジウムには全日空(NH)と日本航空(JL)も登壇した。「アフターコロナ NDCの可能性と新時代へのチャレンジとは?」と題してNHの取り組みを説明したのは同社マーケティング室マーケティング企画部流通政策チームマネージャーの中井正浩氏。
航空会社を含め価格競争とコモディティー化が進む時代に生き残るためには顧客の感動体験の創出が重要で、「そのためには航空会社と流通、さらにはその先の顧客が大容量のデジタル回線を通じて直結する環境、つまりNDCで実現可能な環境が求められる」と分析。同時に取得した顧客データを利用しさらなる価値創造に生かす工夫が不可欠で、その意味でもNDCが必要だとした。
しかし一方でNDC普及を阻む要素にも言及。長らく流通を支えてきたGDSとの比較において、画面レスポンスの速さ、インターラインや複雑な旅程の取り扱い、精算・バックシステム連携の充実度の点で現状ではGDSとの差があり、普及の妨げになっていると指摘。「航空券の完全eチケット化には15年を要した。NDC化にも時間が必要。しかし時間の問題でもある」(中井氏)とした。
またNHは昨年、NDCプラットフォームを自社開発してスカイスキャナーとのダイレクトブッキングの連携を開始すると同時にIATA認証レベル3を取得。2021年にはプラットフォームをアップグレードし、予約変更や払い戻し機能にも対応したうえでレベル4取得を予定だ。 中井氏は「これからNDC化にドライブをかけていこうという矢先にコロナ禍に見舞われてしまった。それでもNDCを通じてアフターコロナに見合った価値創造につなげていきたい。いまはその助走期間と考えている」と述べた。
NDCコンテンツで顧客とのつながりを高める
「ポストコロナにおけるJALディストリビューションとNDC活用のあり方」を説明したJLの企画部ディストリビューション戦略グループの大山雄輝氏は、NDCについて「あくまでも通信規格であり、GDSと比較されがちだが、正しくは既存GDSが使うEdifact通信機能とNDC通信規格、これが正しい対比ワード。将来的にはGDSもNDC通信規格を使うことになっていく」との見解を示した。
そのうえでJLがNDCで実現していきたい内容として「ウェブで販売しているものを顧客に提供したい。現在も旅行会社を通じて顧客とつながっているが、直接提供できるようになりたい。予約機能を顧客に提供し顧客とのつながりを深め顧客満足度の向上を図るのが狙い」と説明した。そうした構想のもと、旅行会社のメリットについては「たとえばオートリイシュー、オートリファンドなど煩雑なADM対応を軽減でき業務効率の向上を図れる。またNDCコンテンツを取得できれば付加価値を付けた販売やオリジナル商品造成が可能になる」ことなどを挙げた。
最後にバーテイルジャパンセールス&マーケティングマネージャーの石井宏明氏がNDCに関する旅行会社の疑問に回答。NDCは原則としてBSP精算が可能で、インターラインの取り扱いも可能、グループ予約に関してもサポートしている航空会社はあることなどを説明した。またレスポンスの遅さについてはキャッシュやストリーミングによる解決が可能で、現時点ではIATA公認代理店のみ取り扱えるのだが、この点についても解決策はあるとした。さらにNDCアグリゲーターであっても旅行会社の依頼に基づき複数のGDSと統合でき、スマートフォン予約についても2021年中にアプリをリリースする予定であると明かした。