ポストコロナの旅行流通、NDCへの期待と課題-バーテイルジャパンがシンポジウムを開催
インターネットとNDCが顧客へ無限の提案を可能にする
シンポジウムの基調講演「NDC時代のエアライン・リテーリング」にはルフトハンザグループでNDCを担当するパウル・イグナーツ・ハンナック氏が登壇。15年からNDC導入をスタートし、航空会社の中でも最も早くから取り組む航空会社の一つであるルフトハンザ(LH)の考え方などを解説した。
ハンナック氏よると以前の航空会社にとっては「運賃とスケジュールと路線をプッシュすることに終始せざるを得ず、商品やサービスを練っても差別化できない時代が続いた。それが、インターネットの普及により航空会社が自社サイトで販売ができるようになってから変化が起きた」という。さらにNDCの登場によって「自社サイトと同じような形で旅行会社や消費者に商品を提供できるようになった」という。
また流通コストをGDSより抑制でき、OTAにとっては顧客のセルフサービス化も促せる点や、運賃を無段階的に提供することが可能な点もNDCのメリットだとしている。「GDSで提供できる運賃は数クラスに限られ、キャビンを分けても運賃は二十数種類。たとえば旅行者が安いエコノミークラスを求めても、売り切れなら次に提示できる運賃は跳ね上がってしまう。しかしNDCであれば、たとえば1ユーロしか違わない選択肢を提示できる。無限のプライスポイントを示すことも可能になる」と説明。
こうした観点から積極的にNDCの導入を図り、国際航空運送協会(IATA)が掲げた「2020年までに座席流通の20%をNDC化する」との目標を、LHに関しては1年前倒しの19年に実現。初めてIATA目標をクリアした航空会社となった。
ハンナック氏は基調講演の最後に「早く行くなら1人で行け。もっと遠くへ行くなら一緒に行け」というアフリカの諺を取り上げ、航空業界全体でのNDCの導入促進を呼びかけた。
アフターコロナ時代にはNDCの必要性が高まる?
基調講演の次にIATAのウィニー・ユーン氏が「エアライン・リテーリング」と題して講演。NDCが旅行者のショッピング体験を劇的に変え、「パーソナル化を実現しダイナミックオファーも可能にし、最新で公正なプライシングを提供できる。加えてオープンかつ最新のスタンダードであり全商品を一つの画面で確認できる優れた取り組み」であるとNDCの開発意義を再確認した。
またアフターコロナ時代の新たな旅行サービスに対応するためにもNDCが有効と説いた。「航空旅行におけるコロナ対策に関連してステークホルダーが拡大する。たとえば旅行者が健康であることを認証する政府などの関わりが欠かせなくなる。隔離が必要な期間の滞在ホテルや移動手段の確保や保険などのアンシラリーサービスも必要になり、単に座席を販売するだけでは十分な役割を果たせない時代になると思われ、NDCの必要性は高まる」(ユーン氏)というわけだ。
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