公認会計士が教える、恥をかかない知っておくべき会計知識 vol.3 ー ゼロベース代表 渡邊勇教氏寄稿
固定資産と減価償却
公認会計士の渡邊勇教が、トラベルビジョン読者のみなさんに、ビジネスパーソンとして知っておいていただきたい会計に関する基礎知識を連載でお伝えする本コラム。3回目の今回はみなさんからご質問が多い「固定資産と減価償却」について解説していきます。(前回までの記事:第1回 会計に出てくる資料の解説と決算書を読むポイント/第2回 会計における3つの集計方法を解説)
そもそも固定資産とはなにか?
まず固定資産と呼ばれるものが何なのかを整理しましょう。固定資産とは、会社の土地や業務用のパソコン、社用車などといった、販売目的ではなく、かつ継続的に会社で使用することを目的とする財産のことを指します。
固定資産は、有形固定資産と無形固定資産に区分され、いずれも共通するのは、原則10万円以上であり、その使用期間が1年を超えるもの、を想定しています。そのため、10万円未満のパソコンや使用期間が1年以内の消耗品は、固定資産とは呼ばれません。パソコンや車といった目に見えるものだけでなく、自社利用のソフトウェアや特許権のような目に見えないものも無形固定資産として、固定資産にみなされるので注意が必要です。
内訳 | 例示 |
---|---|
有形固定資産 | ・建物 ・土地 ・エアコンやパーテーションなど ・パソコン、応接セット → 工具器具備品 ・社用車、バイク ・製造ラインの機械 |
無形固定資産 | ・自社利用のソフトウェア ・特許権や営業権などの〇〇権 |
ここで1点、覚えておいていただきたいことがあります。固定資産の取得原価の考え方は、原則、「本体価格+付随費用」となります。付随費用とは、例えば土地を購入する場合の仲介手数料や、不動産取得税などの税金関係がそれにあたります。固定資産を取得する際に必要であった経費は、基本的に付随費用となり、固定資産の取得原価の中に含めなければいけません。ただし、一部の費用は、税務上は費用として処理することも認められています(例えば、不動産取得税など)。
よくある間違いに、建物の取得にかかった仲介手数料を「支払手数料」として一時の費用とするケースがあります。これをしてしまうと、税務調査の際に大きな指摘になるので、大きな買い物をした際はご注意ください。
では、減価償却とはなにか?
減価償却とは、固定資産の購入費用を使用可能期間にわたって、分割して費用計上する会計処理のことで、時間とともに落ちる資産の価値減少を減価償却費といいます。
キャッシュの流れだけでみると、購入時に一気に支出があるので、一時の費用、というイメージが強いのかもしれません。しかし、会計上はあくまでも資産を取得した、という考え方になります。資産は、会社の財産です。一括で費用になるわけではありません。そしてこの資産のうち、固定資産の多くは、時間と共に価値が減少していくと考えられています。この減少した価値を会計上は費用と考え、これを「減価償却費」と呼んでいます。
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