苦しい時こそ共存共栄の理念を忘れず-「紅いもタルト」の御菓子御殿代表 澤岻英樹氏

コロナ禍中も原材料の買い取りを続ける
回復を見据えて大型店の改装も

 大打撃を受けている観光産業の中でも、最も苦しい状況に置かれているのが土産物店だろう。宿泊や航空の様にビジネス旅行には期待できず、お得意様だったインバウンド客は消えた。需要回復キャンペーンの支援も遅れた。それでも共存共栄を思いつつ難局に立ち向かう御菓子御殿の代表取締役社長、澤岻英樹氏にその胸中を伺った。インタビューは3月11日に実施した。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

御菓子御殿 代表取締役社長の澤岻英樹氏
-御菓子御殿の「紅いもタルト」は、沖縄のどの土産物店でも目にしますが、会社の説明からお願いいたします

澤岻英樹氏(以下敬称略) もともとは私の母が、沖縄復帰直後、米軍施設が整理縮小になったために職を失った基地従業員を雇用し、レストランをオープンしました。その一角でアメリカ仕込みのドーナツやアップルパイ、チョコレートケーキを販売したところ、お菓子の方が人気を集め、1979年にレストランからお菓子の製造販売業に業態転換したという流れです。最初にオープンした恩納店の「御菓子御殿」は工場兼店舗の名称でしたが、15年には社名もこの名前に統一。現在、紅いもタルトは土産物店だけでなくスーパーマーケットなど一般の小売店にも置いています。

-コロナ禍に見舞われた土産物業界、あるいは御社の現状はいかがですか

澤岻 閉店せざるを得なくなった土産物店も少なくありません。私たちの主要拠点施設がある読谷村をはじめとする市町村は、事業者に対してさまざまな支援を打ち出してくれていますが、とてもコロナ禍の深刻化には追いつかず、弊社含め、土産物業界、観光施設は非常に厳しい経営状況にあります。

-業績にも大きな影響が出そうですね

澤岻 コロナ前の売上は58億円でしたが、現在の年間売り上げはコロナ前の25%、4分の1程度まで縮小しています。前年の10%以下になった月もありました。一時GoToトラベルが動いた間は瞬間的に70%まで戻りましたが長続きはせず、一昨年の30%から40%ほどがやっとというのが最近の状況です。沖縄県が需要回復キャンペーンとして実施した県民向け支援事業「おきなわ彩発見」は第1弾、第2弾とも宿泊支援事業として実施され、土産物店、観光施設への影響はごくわずかで、業績は依然として厳しい状態でした。

-にもかかわらず、お菓子の原材料となる紅芋の生産農家を支援していると聞きました

澤岻 はい。農家から届く紅芋は全量引き取っています。仕入れた紅芋はペースト状にしたうえで冷凍にして保管しています。冷凍保管で在庫を持つのは、紅芋の収穫が減る時期も安定生産を続けるためで、昨年、150トン保管できる冷凍庫を作りました。ところがコロナ禍で商品が出ていかないので原材料は貯まる一方。320トンに達しました。自前の冷凍庫では足りないので、冷凍庫をレンタルして在庫を保管しています。売り上げが落ち込む一方で、在庫を保管するための出費が膨らむわけですから厳しさは増します。

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