アジア系トラベルテック企業から見るポストコロナ訪日マーケットの展望(後編)
求められるのは安全性やホスピタリティ
訪日マーケットに強い関心を寄せるインドネシア最大手のオンライン旅行代理店(OTA)tiket.comと、中国の旅行・ホスピタリティITソリューション企業Shiji Group。インタビューの後編では、インドネシア、中国それぞれの旅行者の嗜好の変化や予約傾向などについて聞いた。(インタビュー前編はこちら)
サラ・エローザ氏(以下敬称略) 私たちにとって大きな可能性を秘めています。人口の増加に伴って経済も急成長しており、中間所得層の増加に貢献しています。また2020年はパンデミックの影響で鈍化しましたが、近年旅行はますます身近で手頃なものになっています。コスト意識が高く、かつては「レジャー目的の旅行」と言えば国内旅行を指すことが多かったのですが、現在では海外旅行の意味合いが強くなっています。
加えてインドネシアの旅行者は、以前のように価格や手頃さだけを求めるのではなく、治安や安全性、清潔さ、衛生レベル、ロケーションなど、より詳細な情報を収集しながら海外旅行を計画することも特筆すべき点です。特に今回の世界的なパンデミックの経験はその傾向に更に拍車をかけるでしょう。そのようなニーズに応えるため、私たちはインドネシア語でローカライズされた情報、商品、技術、サービスを提供しています。
アンソン・ラウ氏(以下敬称略) 仰る通り日本に何度も足を運ぶ中国人旅行者が増えているので、日本の二次的な都市や地方への訪問も増えていくのは事実だと思います。 一方で中国はまだ発展途上の国であるこという認識を持つべきかもしれません。中国の総人口のうち、パスポートを保持しているのは人口の約9%に過ぎません。一方で日本は約25%、アメリカは約47%です(編集部注:外務省旅券統計、US Census Bureauより)。将来初めて日本を訪れる中国人の中には、東京、大阪、京都を目的地にする人がまだまだ多いと言えると思います。
ラウ 中国人観光客は民泊施設よりもホテルに滞在することを好むというのが私の見解です。この傾向はCOVID-19の流行によってさらに促進されました。中国の観光客にとってホテルは、ホスピタリティのプロによって運営されている組織であり、安全・衛生基準を備え、快適であると認識されています。中国国内で民泊市場が観光客の一般的な宿泊施設になるまでには、品質や信頼性の面でまだまだ改善の余地があるでしょう。
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