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海外旅行復活に備え、旅行会社が今やるべきこととは?-JATA経営フォーラム

業界全体でコロナ対策プラットフォームの構築へ
デジタル化と顧客を逃さぬ人間力を両立

パッケージツアーは少人数・高品質・企画力がカギ

旅工房代表取締役会長兼社長の高山泰仁氏  続くパネルディスカッションでは、各社が今後の市場環境を予測した。旅工房代表取締役会長兼社長の高山泰仁氏は、旅工房が主にインターネットで若者をターゲットに個人旅行を販売していることから、添乗員付きツアーがメインとなる管理型旅行期や市場回復移行期は「(自社にとって)大変厳しい環境」と予想。「一日も早く平常期にならないと売上があがらない」としながらも、「平常期には必ず海外旅行の大ブームが来ると確信している」と期待を述べた。

 阪急交通社代表取締役社長の酒井淳氏は、コロナ以前は自社商品の8割以上が募集型企画旅行で、その5割以上を海外旅行が占めていたことを説明し、海外旅行の復活の重要性を強調。ただし「売り手がアピールしてもお客様がその気にならなければ旅行に参加してもらえない」と話し、日本や相手国のコロナ対策、相手国が観光客を歓迎してくれるかが課題になるとした。

 さらに、同氏は阪急交通社のリピーター2000名にこのほど実施したアンケートについて説明。「1年以内に海外旅行に行きたい」と答えた人は全体の8割で、このうち20名未満のグループでの参加を希望する人は、コロナ以前は4割程度だったところ、今回は9割と大幅に増えたという。酒井氏は「少人数化に対するコストアップをどれだけ中身と危機対応でカバーできるかも課題になる」と語った。

 ワールド航空サービス代表取締役社長の松本佳晴氏は、管理型旅行期から添乗員付きツアーが回復するとの予測を示すとともに、「コロナ以前の数が利益を作る時代ではない。(今後は)少人数で質や企画力が利益を作るツアーに変わっていく可能性がある」とコメント。「JATAの多くを占める中小旅行会社各社の専門力を活かした、手作り感の強い企画が市場をけん引していくのでは」と中小旅行会社の活躍に期待を示した。

業界全体でコロナ対策、他社と協働でデジタル化や仕入れを

 パネルディスカッションでは、江利川氏が「管理型旅行期を長く続けるだけでは海外旅行の復活は期待できず、各社の事業の継続にも影響する」としたうえで、市場回復移行期に取るべき旅行会社の対策などをパネリストに問いかけた。

 酒井氏は、海外旅行を再開してすぐの段階では旅行会社単体でできることは限定的との考えを示し、他社との協働の必要性を説いた。なかでもコロナ対策については「切磋琢磨する案件ではない」と語り、「添乗員が困るのは病気やケガ、交通事故などのトラブル。そういう事態になったときの現地の体制があれば」と業界全体で体制を整えるべきだと訴えた。

 松本氏も「『これにのれば安心安全が担保される』と消費者に訴えて説得できるようなベースメントを業界として作っていくことが極めて重要」と語り、業界共通のコロナ対策プラットフォームの必要性を指摘。高山氏も「デジタルでのプラットフォーム、病院、保険、心配な時に24時間どこの国からでも繋がるコールセンターを旅行会社1社でやることは厳しい。皆で予算を出し合って運営できれば」とコメントした。

 さらに、高山氏は「若者は海外旅行へのニーズがとても強いので、環境さえ整えば旅行に行く」としたうえで、「管理型旅行は添乗員付きという流れはあるが、デジタル技術を活用して、外国のガイドだけでもしっかりウィズコロナの旅行商品を造成できる環境が作れるのでは」と持論を展開。「旅行会社皆で、スマートフォンで行動履歴を取るようなアプリの共同開発を進め、添乗員がいなくてもできる海外旅行を模索したい」と話した。

 加えて、松本氏は旅行会社の協働の例として、共同でチャーターを実施することを提案。旅行会社、航空会社やツアーオペレーターなどを含む観光産業全体で「企画性、提案性、訴求力のある商材を一緒に探す」よう呼びかけた。