コロナがシンガポールにもたらした変化

  • 2021年2月16日

シンガポールの就労ビザの状況
ビザ厳格化、減少する外国人

 F-ness International (Singapore) 代表取締役の赤井亮太です。シンガポールはそろそろ雨季が終わり乾季に入りましたので、雨が降らず蒸し暑い日が続いています。やっとシンガポールらしい季節になってきたという印象です。

 さて、読者の皆様の中には、企業の海外出張や海外駐在等を扱っている方も多くいらっしゃると思います。本日はシンガポールの就労ビザの状況をご紹介し、今後の出張・駐在需要に役立てて頂ければと思います。

1.シンガポールの人口構成

 シンガポール首相府戦略グループの発表(2020年9月24日)によると、同国の6月時点の人口は568万5,807人(前年比0.3%減)となりました。人口減となったのは、新型コロナウイルスの影響で外国人が減少したことに伴うもので、人口が前年割れとなるのは新型肺炎(SARS)が流行した2003年以来のようです。首相府戦略グループによると、外国人の減少は、特にサービス分野で働く外国人労働者が新型コロナウイルスに伴う渡航規制と需要減の影響を受けて減少したことによるもの、としています。この背景に関しては、詳細を後述します。

 シンガポールも日本と変わらず、合計特殊出生率は1.5(最新の統計では、日本は1.4程度、シンガポールは1.2程度で、シンガポールの方が日本よりも低い状況)を切っており、2003年から2020年まで人口を増やし続けてこられたのは移民政策につきます。

 日本でもしきりに議論をされていますが、少子高齢化を食い止めることは容易ではなく(なぜなら、高齢者の死亡を上回る以上に出生者を増やさなければならないが、長く続く少子化で子供を産む世代の人口が減っているため、すぐには子供が増えない)、移民政策を取るというのは大きな手段であることは間違いありません。この分野ではシンガポールは最先端を行っており、成功例と言えるでしょう。

 脱線しましたが、シンガポールの話に戻りましょう!

 総人口のうち、2020年6月時点の国民(ローカル)は352万3,191人(前年比0.6%増)でした。一方で、外国人(就労者や帯同家族、学生ビザなど)は164万1,597人で、同2.1%減だったほか、外国人の永住権者も52万1,019人と、前年比0.8%減だったようです。

図1. シンガポール政府統計資料(2020/9/4発表)を基に作成

 つまり、約30%が就労を目的とした外国人だということです。もっと多いように思われた読者の方もいるかもしれません。というのも、永住権取得者も元々は違う国籍でありましたから、そこも加えると40%近くが外国人(もしくは違うパスポートを持っている人)と言えます。

 この外国人の中には下記のように様々な就労ビザがあります。日本でもシンガポール型の移民政策を見習うべきという議論もありますが、シンガポールの移民政策は下記のように徹底的に管理されています。

Employment Pass(EP) Holders

・一定金額以上の給与に対して発給されるビザを持つ者。
・日本企業から派遣される駐在員は主にEPを取得している。

S Pass Holders

・一定数のシンガポール人を雇っている企業に振り分けられている外国人雇用枠ビザを持つ者。
・当然と言えば当然ですが、シンガポール人を雇う=シンガポール経済に貢献しているということで、シンガポール人を雇えば雇うほど企業は外国人枠を得ることができ、外国人労働者用にS Passもしくは上記のEPを発効できます。

Work Permit Holders

・主に工事現場等で働くビザを持つ者。
・シンガポール人は炎天下の下で建設作業をすることを好みません。そのため、工場や建設作業をする方々も移民で占められています。

Foreign Domestic Workers

・メイドとして働くビザを持つ者。
・日本では馴染みがないかもしれませんが、シンガポールでは夫婦共働きが前提ですので、メイドを雇っている家庭が多くあります。そのメイドも、フィリピンやインドネシア等の国から労働目的に就労ビザを取得しています。

Dependants(DP) of Citzens/PRs/Work Pass Holders

・シンガポール人や永住権、そして労働ビザ保持者の扶養家族としてのビザを持つ者。

Students

・学生としてのビザを持つ者。

 最近、オリエンタルラジオの中田敦彦さんが、シンガポールに移住されると報道されましたが、どのようなパスで来られるのでしょうか?会社を設立されて、EPを取得して来られるのですかね!?

 脱線しましたが、これらのパスを持っている外国人で、人口の30%程度が構成されているわけです。シンガポールは、多国籍なイメージがあると思いますが、非常に厳重に厳密に外国人を管理しています(例えば、犯罪歴があるような人にはビザが下りない)。それ故、犯罪は少ないですし、治安が良いことがまた多くの人に「住みたい」「働きたい」と思わせ、それが移民を引き付けるというようになっています。