【仕事を変える】IT業界から観光産業へ 業界特化型プラットフォーム構築を目指して-石原正人氏

  • 2020年12月21日
石原正人氏。インタビューはオンラインで実施した

 これまで当企画では、観光産業から異業種に挑戦する方や業界内の異なる分野で起業した方などを紹介してきたが、今回ご登場いただくのはIT業界から高級ホテル・旅館の予約サイトの一休、そしてクチコミ・プラットフォームを提供するTrustYouへと移った石原正人氏。コロナ禍を機に独立し、自らの知識や経験を活かして観光産業に恩返しをしたいという同氏に、これからの業界に求められることは何か、異なる背景を持つ立場からの考えを伺った。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

-まずまずは観光産業に関わるまでのご経歴をお聞かせください

石原正人氏(以下敬称略) 大学卒業後に単身シンガポールへ渡り、学生時代の先輩の仕事の手伝いを始めました。担当したのは会社内のIT業務全般で、社員としてではなく半常駐しながら業務委託の形で働きました。

 食い扶持を稼ぐために飛び込み営業もして、ホームページ作成やウェブ広告の運営の手伝いなども手掛けました。10年以上前のことで、当時は同じような動き方をする人がいなかったこともあって日本の駐在員の方にかわいがってもらい、クチコミで仕事をもらうこともありました。今に比べると物価も安く就労ビザも下りやすかったので、ラッキーなタイミングだったと思います。

 4年ほど経った2012年に日本人の女性と結婚して帰国。ウェブ系の会社に就職しましたが、並行して個人での仕事も続けました。日本では企業が新規事業を立ち上げる際に社外のリソースを活用し始めた時期で、私自身もクラウドソーシングのプラットフォームを利用し、サイト開発やデータ移行など、シンガポール時代よりもよりテクニカルで企業のビジネスの中心に近い仕事に関わるようになりました。

-一休に入られたきっかけは何ですか?

石原 20代後半になり、日本での仕事にも慣れてきてまた海外の仕事もしたいと思うようになった頃、一休の海外営業とウェブ周りの人材募集を見つけました。色々な国を回って高級ホテルに入って商談できるなんて楽しそうだなと(笑)。一休では海外のホテルから直接仕入れをするという試みを始めたフェーズで、縁があって採用されました。

 それまで一休という会社は他社との在庫連携には消極的で、注力している仕入れエリアも高級施設に特化しており、業界内では謎めいた存在でした。しかし、海外のホテルを自社ブランドで販売するのに仕入れをマンパワーベースで行うのは非効率だという社長の意向もあり、裏では競合他社と組んで在庫を共有し、表は独自のサービスサイトを作るというビジネスモデルへの移行が決定。そのプロジェクトを任せてもらうことになりました。

 そこからはブッキングドットコムやエクスペディアなど、BtoBの在庫を持つ会社を20社ほど回ってパートナーを探し、新サイトを構築しました。同時に海外の会社とも在庫連携して、インバウンド需要向けの流通チャネルを海外にも増やしていきました。

 一休での仕事は私のキャリアのハイライトのひとつであり、非常に充実した時間を過ごしました。それまでは開発サイドのビジネス担当という役割で仕事をしていたので、対OTAの営業は初めてでしたし、システム連携や分析業務というこれまでにない経験もできました。