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ニューノーマル時代のツーリズム、官民が今できること-ツーリズムEXPO

ツーリズムを見直し新しい価値の創造をめざす
withコロナのツーリズムのヒントとは?

次代の旅行のキーワードは、ローカル、デジタル、パートナーシップ

吉田氏(右)と山北氏(中央)

 日本のインバウンドはここ数年間の大幅な成長から急転直下、コロナ禍によって小休止を余儀なくされている。逆にだからこそ「ツーリズムがローカルコミュニティーにどのような影響を及ぼすのか、これからツーリズムの戦略をつくる上でどこにフォーカスを当てるべきなのか、よく分かるようになった」とJNTOの吉田氏は振り返った。

 近年明らかになった課題の一つに、いわゆるオーバーツーリズムがある。ここから言えることは、持続可能な観光のためには経済的な便益を追うだけでは不十分であり、ローカルな文化の成長も図りながら「ツーリズムの質を高めていく」姿勢が不可欠である。

 したがってJNTOではアフターコロナを見据えて、海外へのプロモーション以上に「地方自治体やローカルな旅行組織など、国内のパートナーと積極的に協力していきたい」としている。最新の正確な情報を共有し、インバウンドの質向上につなげたい構えだ。

 JTBの山北氏は、今回のパネリストの中でただ一人の民間部門の登壇者。海外との往来は依然として厳しく制限されているが、これは見方を変えれば「ツーリズムそのものを考え直す絶好の機会」と捉えることができ、完全再開に向けた道程の中で以下の3点を提案した。

 第一に、顧客の経験・体験を最重視すること。近年はツアー料金の安さや予約のしやすさばかりに目が行きがちだが、検討・相談を始める段階から、実査に現地を訪れ帰宅するまで「旅行にはいろいろなステージがある」。心に残る旅の思い出は次なる旅行欲をかき立て、「こうした顧客の長い道のりをサポートし、サイクルを回していくことが何より大切だ」と訴えた。

 二点目は、できるだけたくさんの関係者をツーリズムに巻き込み、パートナーシップを構築すること。そして第三に、デジタル技術を積極的に導入すること。「顧客の全般的なサポートチームを作り、これをプラットフォームとして旅行経験の改善につなげていきたい」と抱負を述べた。

 また、今回のフォーラムには、国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏、太平洋アジア観光協会(PATA)CEOのマリオ・ハーディ氏からビデオメッセージが寄せられた。グテーレス氏は「ツーリズムで生活する何百万もの人々を支えるには、持続可能で責任ある旅行体験が、受け入れ側コミュニティ、労働者、そして旅行者にとって安全なものでなければいけない」とし、危機の社会経済的影響の緩和など5つの重点分野を打ち出した。

 さらに「消費者の信頼を再構築するソリューションが今後1カ月以内に見つからない場合、直接観光に関わる1億人を超える雇用が世界的に危険にさらされる」とのデータを示した上で、「地域社会の人々にプラスの利益をもたらすことに焦点を当て、業界の再編・再構築を支援したい」とPATAの役割を語った。