ニューノーマル時代のツーリズム、官民が今できること-ツーリズムEXPO
ツーリズムを見直し新しい価値の創造をめざす
withコロナのツーリズムのヒントとは?
観光分野の危機管理における政府の役割は
スペインのトレド氏によると、スペインの国内総生産(GDP)に占める観光産業の割合は12%。他の国々と同様、コロナ前のインバウンド市場は順調に成長を続け、2019年には8300万人以上が来訪していたが、コロナ後は「世界中が止まってしまった。インバウンドがなくなってしまった」。未曾有の危機に際し、政府が講じた緊急の対策は、観光産業に対する資金援助やローン保証、雇用を守るための賃金の支援など。またEUでは復興基金が設立され、スペインには1400億ユーロが提供されたという。
ヨーロッパでは夏以降に第2波が襲来するなど依然厳しさが続いてる。その中で業界では「人々をトレーニングし、インフラを改善し、デジタル化も推進している」とコロナ後の世界を見据えた準備を進めており、「このパンデミックが終わった暁には、さらなる成長が再開するだろう」と展望した。
エジプトのカーメル氏は、エジプトで観光産業に従事する人の割合は全体の12%、GDP比では20%を占めるなど産業規模が大きく、中東地域には2030年までに1億9500万人が往来すると予測されていたがそれも跡形なく消失し、被害がいかに甚大であったかを説明。エジプトでは感染拡大が収束し始めた5月頃から経済再建に向けて動き出し、「政府主導で総合計画を実施し、WHOの勧告をベースに国内産業の復興を図り、7月にはインバウンドの再興に着手した。そして10月中旬には約25万人の旅行者が15の国から訪ねてくるようになり、問題なく安全に帰国している」と報告した。
ギザで来年開館予定のグランド・エジプシャン・ミュージアムを例に、官民連携のあり方にも言及。地域住民や民間企業などあらゆるステークホルダーを観光業に巻き込む仕組みづくりと、ツーリズムファンドの必要性を説いた。
続いて議論のバトンは日本側に移り、観光庁の金子氏は、危機管理における政府の役割を訴えた。2019年に日本で開催されたG20観光大臣会合で、観光分野における危機管理の重要性を初めて打ち出したのは、日本政府が主導したもの。観光はその性質上、災害の影響を非常に受けやすいため、「各国がそれぞれの知識と経験を共有し、強靱性を高める必要があると考え、宣言の附属書2として観光危機管理に関する行動計画を採択した」と成果を述べた。
再開が待たれる国際的な人の往来に関して、最新の動向も紹介した。コロナリスクの低い、アジア太平洋地域を中心とする16カ国をターゲットとし、日本政府は徐々に門戸を開いていくことを計画。ビジネス分野では、既にシンガポールと韓国を対象に入国時14日間の待機を緩和しているが、同様の措置を次はベトナムにも適用予定であると報告した。