ドイツ観光局、来夏に向けて3本立てのキャンペーン展開
ドイツ観光局は10月21日にオンラインプレス発表をおこないドイツのインバウンドの現状や日本におけるキャンペーン展開について説明した。それによると19年の訪独外国人宿泊数は前年同期比2.6%増の8990万人泊となり過去最高を記録したが、20年はコロナ禍で状況が一転し今年上半期は59.9%減まで落ち込んだ。
ドイツ観光局は、インバウンド需要の回復には当初予想より時間がかかると見ており、需要は23年になっても19年の宿泊数の86.4%にとどまり、出張旅行の減少により100%に到達するのは難しいと状況を分析。ドイツ観光局アジア・オーストラリア地区統括局長の西山晃氏は「ドイツは産業見本市の開催が多く観光産業を支える柱の一つだけに、コロナ禍による見本市の開催中止が、とくに大都市において深刻な打撃となっている」と現状を述べた。
コロナ禍前は日本市場も好調を維持。パリのテロ事件の影響で欧州旅行が落ち込んだ16年以降は訪独日本人旅行者数が右肩上がりで増加しており、19年の宿泊数は120万人泊に到達。日本人の欧州旅行の訪問先国別ランキングではイタリア、フランス、スペインに次ぐ第4位となっている。
好調を支える要因の一つがクリスマスマーケット人気で、ドイツ観光局広報マネージャーの大畑悟氏は「『クリスマスの国』ドイツのイメージが浸透し、19年12月の宿泊数は11万512人泊で歴代最高を更新した」という。しかしコロナ禍後は日本人の宿泊需要も急減し、20年1月~7月の宿泊数は前年同期比71%減まで減少している。
こうした状況を受けてドイツ観光局は「いずれ国境が空くことを前提に、とくに来年の夏に向け旅行者を獲得するためにできることをやって行く」(大畑氏)との方針のもと、日本市場におけるキャンペーンを展開している。
ベートーベン生誕250周年を祝うPodcastキャンペーン「#Discover Beethoven 2020」は、今年冬の終了予定を延長して来年9月までの継続を決定。同年末まで継続の可能性も残しつつ、来年以降の音楽ファンの誘致を図る方針だ。内容はベートーベンの生涯や関係する観光地のストーリーをPodcastで聞く音声キャンペーンで、全6話構成されており間もなく配信を開始する予定となっている。
「German Summer Cities 2021」は来年夏の旅行需要獲得に向けて今秋冬からスタートする全世界規模のキャンペーン。現在はコロナ禍で人の移動ができないものの、今のうちから来夏を見据えてドイツの魅力をアピールするのが狙いで、日本市場では主にツイッター上で実施する。
コロナ危機の直後の3月から開始したソーシャルメディア・キャンペーンの「#Discover Germany From Home」はツイッターとインスタグラムを中心に展開中。家に居ながらにしてドイツを楽しもうという趣旨の共感キャンペーンで来年も継続の予定だ。このキャンペーンはここまで大成功を収めており、「#Discover Germany From Home」の日本語投稿は1175件、うちドイツ観光局公式アカウントの発信分である146件を差し引いた約1000件が、一般消費者やインフルエンサーからの投稿となっている。これら投稿には34万4513の「いいね」が押されており、インプレッション数(広告や投稿の表示回数)は3400万を超えると推計される。
同キャンペーンにおけるドイツ観光局の投稿で最も人気が高かったのはドレスデンにある「世界一美しい牛乳屋さん」に関するもので、宮殿のような店内を3D映像で探索できるサイトの存在を案内した内容。7200の「いいね」が押され、リツイート2600、引用ツイート100という大きな反応があった。2位はケルン郊外にある世界遺産のアウグストゥスブルク宮殿などを3D映像で楽しめるサイトの紹介、3位はワイマールにある世界遺産のアンナ・アマーリア公妃図書館を3D映像で楽しめるサイトの紹介で、3Dによるバーチャル体験関連の投稿が上位を占めた。
なおドイツ観光局では20年の日本市場について2~3%程度の伸びを期待していたもののコロナ禍で想定が崩れており、西山氏は「2030年に1億2100万人泊というドイツ観光局全体の大きな目標を念頭に、日本における活動も組み立てていきたい」としている。