シンガポールの現状と旅行業界の展望(後編)-世界の「今」を駐在員の視点から
インバウンド偏重からの脱却
Flight No where の登場
シンガポールは国土も狭く国内線が存在しないため、シンガポール航空(SQ)の経営はJALやANA等と比べても厳しい状況です。数週間ほど前には合計4,300人程度の人員(全体の7%)を削減すると発表しました。日に日に経営に厳しさが増しているということでしょう。
そんな中SQが打ち出したサービスが” Flight No Where”です。これは、移動を目的としてのフライトではなく、フライトそのものを楽しむという発想で、チャンギ空港を飛び立ち3時間程度飛行した後、またチャンギ空港に戻ってきます。機内サービスを楽しみ、景色を楽しみ、飛行機を楽しむという商品です。
当初10月末からのサービス開始予定でしたが、プレス発表後3日間で数百件の問い合わせがあったようです。知人に聞いても、このサービスを楽しみたいと言った人は多くいました。特にこの機会にビジネスクラスを体験してみたいという人が多かったです! 私もその一人でした!
結果的に、9/30(水)SQは環境への配慮から(航路が確保できなかったのではないか)Flight No Whereは中止すると発表しました。個人的にも楽しみにしていたので残念ですが、代わりにチャンギ空港にあるSQ機材(A380)内で食事を楽しめたり、自宅にビジネスクラスやファーストクラスの食事をデリバリーするようなサービスを始めるようです。
エアラインとしても機材を寝かしておくわけにはいかないですし、また従業員の雇用も確保しなければいけないので、今後他のエアラインでもこのような流れは広がっていくと思います。移動手段としてのフライトだけではなく、アトラクションとしてのフライト、もしくはダイニングの側面もクローズアップされていくのでしょうか。
上記のように、ホテルはStaycationやF&B、航空会社はアトラクションとしてのフライトに活路を見出しています。
コロナ渦は人々の生活を一変させてしまいましたが、新たな文化に触れる、価値観に触れる、やはり旅行はなくならないと信じています。日本はGo To Travelもあり、また国内観光需要もあるのでシンガポールよりも状況がいいのではないかと思いますが、今回挙げさせて頂いたいくつかの事例を参考にして頂けると幸いです。もう少しの間だと思いますが、一緒に辛抱していきましょう!