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海外医療通信 2020年9月号【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

  • 2020年9月28日

※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

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東京医科大学病院・渡航者医療センター

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海外感染症流行情報 2020年9月

(1)全世界:新型コロナウイルスの流行状況

新型コロナウイルスの累積感染者数は9月下旬までに約3200万人、死亡者数は約100万人になっています(米国ジョンホプキンス大学 2020-9-26)。1か月前に比べて累積感染者数は約1000万人増えており、新規感染者数も再び増加しています(WHO Corona virus disease 2020-9-21)。地域別ではアメリカ、ブラジル、インドで感染者発生が多く、インドでは10万人近くが発生する日もあります。ヨーロッパでも流行の再燃がみられており、スペイン、フランス、英国などでは、3月の第1波を越える感染者数が報告されています。こように北半球の温帯地域では流行が再燃している模様で、今後、冬に入り感染者がさらに増えることが懸念されています。

日本政府は、感染状況が落ちついている国との2国間協定により、ビジネス渡航の再開を図っています。この協定による渡航の再開は既にベトナム、タイ、シンガポールなどとの間で行われています。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/cp/page22_003380.html

(2)全世界:世界のポリオ流行状況

WHOは8月25日にアフリカから野生株のポリオウイルスの流行が根絶されたことを発表しました(WHO Africa 2020-8-25)。これで、野生株の流行国はパキスタンとアフガニスタンの2か国のみになりました。一方、ワクチン由来のポリオウイルス(ワクチン株)の患者は世界各地で発生しており、アジアでは中国、フィリピン、マレーシア、インドネシア、パプアニューギニア、ミャンマーなどで確認されています。米国CDCや日本の外務省は野生株の流行地域はもちろんのこと、ワクチン株の流行地域に滞在する際も、ポリオワクチンの追加接種を受けておくことを推奨しています(米国CDC 2020-8-28、外務省安全センター 2020-9-1)。

(3)アジア:アジアでのデング熱流行

シンガポールでは今年のデング熱患者数が9月までに2万8000人にのぼり、例年にない大流行となっています(WHO Western Pacific 2020-9-24)。死亡者も20人確認されています(Outbreak News Today 2020-8 -29)。一方、それ以外の東南アジアの国々では患者数が例年よりも少ない状況です。

台湾では台北周辺の桃園で、8月末までにデング熱患者が14人発生しました(Outbreak News Today 2020-9-1)。台湾では南部だけでなく、北部でもデング熱への注意が必要です。

(4)アフリカ:コンゴのエボラ熱流行

コンゴ民主共和国北西部にある赤道州で6月からエボラ熱の流行が発生しています。8月中旬までにMbandakaなどで患者数は120人以上にのぼり、うち50人が死亡しました(WHO Africa 2020-9-20)。流行の中心にあるMbandakaは河川輸送のハブであり、周辺地域への拡大が懸念されています。

(5)ヨーロッパ:イタリア、フランスでデング熱発生

イタリア北東部のビチェンツアで海外渡航歴のないデング熱患者が発生しました(Fit For Travel 2020-9-15)。フランスのニースでも9月になりデング熱の国内流行が発生しています(Fit For Travel 2020-9-15)。イタリアやフランスでは新型コロナの流行で蚊の対策が停滞しており、その影響がデング熱の国内流行に関与しているようです。

(6)ヨーロッパ:ドイツでダニ媒介脳炎患者数の増加

ドイツのダニ媒介脳炎の患者数が9月上旬までに535人になりました(Outbreak News Today 2020-9-11)。例年よりも約10%多い数で、患者は南部の州で増えています。新型コロナの流行により屋外で過ごす人が増えていることが、患者数増加の原因の一つと考えられています。

 

・日本国内での輸入感染症の発生状況(2020年8月10日~2020年9月6日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査を参考に作成しました。新型コロナウイルス流行にともなう渡航制限および入国制限により、この期間中の輸入感染の事例は大幅に減少しています。出典:https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2020.html

(1)経口感染症:輸入例としては腸管出血性大腸菌が1例のみでした。

(2)昆虫が媒介する感染症:マラリアが3例報告されており、全例がアフリカでの感染でした。デング熱はこの期間に報告されませんでした。

(3)新型コロナウイルス感染症:この期間に2例(インド、米国で感染)の輸入確定例が報告されています。

 

・今月の海外医療トピックス

9月28日は「世界狂犬病デー」

9月28日は、狂犬病ワクチンを開発したパスツールの命日にちなみ「世界狂犬病デー」に指定されています。この日は世界中で、国民への狂犬病教育や犬への狂犬病予防接種推進の取り組み等が行われます。日本は、1950年の狂犬病予防法の制定で、年1回飼い犬の予防接種を開始しました。1957年以降国内発生例はなく、数少ない清浄国のひとつです。世界に先駆け、積極的な狂犬病対策がなされてきた優等生的な存在にあります。

今年は、新型コロナ流行による外出自粛の影響でペットを買い求める人が増え、国内のペットショップの犬が品薄になっているようです。その一方で、経済的な理由から、犬を手放す飼い主も増えていると聞きます。そこで、私が気になったのは、「飼い主が今年の狂犬病予防接種をお忘れではないか?」という点です。2020年は新型コロナの影響で、犬の狂犬病予防接種期間が変則的になっています。今は、狂犬病清浄国の日本ですが、予防が不十分になれば、再び汚染国になる可能性もゼロではありません。人獣共通感染症である狂犬病は、発症すると100%死亡します。世界はコロナで大変な状況にありますが、狂犬病予防にも関心をもっていただければと思います。(栗田直) 参考:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/dl/200611-01.pdf

 

・渡航者医療センターからのお知らせ

(1) オンラインによるワクチン相談の開始

渡航者医療センターではオンラインによるワクチン相談サービスを開始しました(有料)。オンライン診療で、渡航地域に応じたワクチン接種プランの提示や、留学に必要な書類の作成アドバイスを行います。詳細は下記をご覧ください。https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/news/shinryo/20200729_2.html

(2)海外在留邦人向け新型コロナウイルス感染症よろず相談窓口のお知らせ

渡航者医療センターでは海外在留邦人向けに「新型コロナウイルス感染症よろず相談窓口」を開設しています。海外在留邦人の方ならどなたでも、電子メールによる相談が受けられます(無料)。詳細は下記をご覧ください。

https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/news/shinryo/20200421.html