【仕事を変える】外資系航空会社からアーユルヴェーダの世界へ 41歳の選択-比留間絢子氏
旅行会社、航空会社、スリランカのランドオペレーターと、観光産業に関わる仕事に携わり続けてきた比留間 絢子氏。旅行業界を愛してやまない彼女は、このコロナ禍中敢えて異業種で起業する道を選んだ。約1年ぶりとなるシリーズ「仕事を変える」では、業界経験を武器に新しい仕事に挑戦する比留間氏に、起業を決意するまで経緯と今後の事業展開について伺った。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)(第1弾 / 第2弾)
比留間絢子氏(以下、敬称略) 2002年4月に株式会社エフネスに入社して、国際航空券の予約手配などを担当しました。これが初めての社会人経験かつ旅行業界の経験で、約4年働きました。2006年11月にエバー航空(BR)に転職し、予約発券課に1年半在籍、その後営業職に憧れて2008年6月キャセイパシフィック航空(CX)へ移ります。CXには8年ほど在職しましたが、その間にスリランカに惚れ込み、スリランカ最大手の現地オペレーター会社である、ジェットウイング・トラベルズの日本オフィスに2016年9月に入社。約4年勤めましたが、コロナの影響で今後の見通しが読めなくなったことをきっかけに、今年5月中旬に退職しました。起業を決意したのはその後です。
比留間 こういう言い方は偉そうに聞こえるかもしれないのですが、CXは私がいなくてもやっていける、けれどもスリランカは本当にマーケットが小さく、一人の声の影響力が大きいと感じたのが大きな理由です。スリランカは日本と比べると時間の流れが非常にゆったりとしていて、先進国で働く私たちが忘れがちな「人間らしさ」を感じることができます。ジェットウイング・トラベルズへの転職を決める前から4、5回渡航していたのですが、ネゴンボという町のアーユルヴェーダホテルでヨガをしているときに、突然悟りを開いたかのように涙が出てきて、「私はこういうことがやりたいんだ、こういうことを広めたいんだ」と思い、帰国する時には決意を固めていました。
比留間 正直なところ、コロナがなければこんな発想には至らなかったと思います。それまでにも複数の方から、「そんなにスリランカが好きならフリーランスでやってみたら?」とアドバイスをもらったことはありましたが、大雑把で細かいことに弱い質なので、独立など到底無理だと思っていました。でもコロナ禍がやってきて、会社が収入を得られない状況なのに、休業手当があるとはいえ働かずに給料をもらうこと、とはいえ、お給料はもらわなくて生活にも影響が出るし、また日本はありがたいことに最低給料が保証されているし・・・、などと自分のコストが会社の負担になることに激しい葛藤を感じました。 その葛藤の元は、自分の生活を誰かに委ねることへの違和感でした。であれば、これは自分の力を試す良いタイミングなのではないか。これまで幸せな時間を過ごさせてもらった旅行業界に携わっていきたい、できれば役に立ちたいという思いもあり、競合する仕事ではなく異業種で独立することを決めました。
比留間 まずはアーユルヴェーダのサロンを自宅で開きますが、アーユルヴェーダの施術や、生活リズム、食事などのアドバイスをするサロンは、東京にはいくらでもあります。私の場合、セラピスト業はあくまでツールのひとつで、最終的なゴールは、旅行業界への貢献、特にスリランカに送客をして、認知度を高めていきたいというところにあります。 現地のアーユルヴェーダドクターと繋がりがあるので、現在であればオンラインでのコンサルテーションを企画したり、旅行が再開されたら本場でアーユルヴェーダを体験する旅行をコーディネートしたりと、旅行会社さんにアイデアを提供する形で業界に恩返ししていきたいと考えています。
サロンのお客様は当面女性のみに絞る予定です。1回の施術は90分~120分。私の場合はその前後にコンサルテーションを行うので、1日2組までと考えています。希望者には、先述の通りスリランカのドクターからのアドバイスが受けられるような環境も作ります。ドクターは英語ですが、専門用語も出てくるので、私が通訳を務めます。
スリランカのアーユルヴェーダの特徴は薬草を使ったオイルで、種類も多岐に渡っています。その時々のお客様のコンディションに合わせてお選びするので、今のところ出張での施術は考えていません。施術後の掃除も結構大変なんですよ。 アーユルヴェーダと聞いて、額にオイルを垂らす「シロダーラ」をイメージされる方も多いのではないかと思います。実際にそちらを希望される方も多いのですが、本当に効果やお客様の身体のことを考えると、すぐに施術するものではく、準備とアフターケアが必要です。かくいう私も以前施術を受けたのですが、その時はドクターのアドバイスを聞き流して施術後に外出してしまい、吐き気がするくらいの酷い頭痛に襲われました。人によっては感情の起伏が激しくなる場合もあるので、しっかりとした管理の元で受けるべきものなんです。