HIS、ラ・リーガと模索する海外サッカーツーリズムの可能性
昨夏にスペイン1部リーグとスポンサー契約
「共通の価値観」で前進、観戦ツアーのその先は
牛谷達郎氏(以下敬称略) 私がスポーツイベントセクションに配属された13年前の送客数は、年間で500人から600人ほどでした。各国のリーグの人気は日本人選手の在籍状況などで変動し、英国のプレミアリーグの送客が伸びたと思ったらLaLigaが落ち込む、といった感じで、合計の送客数は急激に伸びることはありませんでした。
しかし14年のボルシア・ドルトムントへの協賛をきっかけに、一気に年間1000人へと拡大し、その後は徐々にHISの海外サッカー観戦商品の認知度も上がっていきました。昨年の総客数は約2000人にまで増え、そのうちLaLigaは半数を占めます。
BtoC販売は緩やかに伸びていますが、現在注力しているのは企業研修などのBtoB販売です。東京五輪の開催決定を機に、日本でもスポーツビジネスへの関心は高まっています。
牛谷 業務渡航としてのLaLiga本社などの視察や、Jリーグのユースチームの遠征などがあります。
山野邉 LaLigaについてはリーグ運営を立て直した歴史があるので、それをビジネスとして学ぶ企業研修なども可能だろう。それによって、LaLigaとビジネスでつながる企業も出てくるのではないか。
牛谷 LaLigaには現在、バスク州のSDエイバルに乾貴士選手、バレアレス諸島のRCDマジョルカに久保建英選手が所属することから、3月7日の両チームの対戦を「ジャパンダービー」と銘打ち、観戦ツアーを造成して10名ほどを送客しました。この企画はLaLigaから提案されたもので、乾選手は残念ながら出場されませんでしたが、久保選手は得点を決めました。
試合後のイベントには乾選手にも参加していただいて特別感のある企画になり、SNSなどではこれまでにない反響がありました。新型コロナウイルス感染症の影響で中止しましたが、日本では「ジャパンダービー」のパブリックビューイングも開催する予定でした。
また、「ジャパンダービー」に先立ち2月には、レアル・マドリード対アトレチコ・マドリードの「マドリードダービー」を女性タレントと観戦するツアーも催行し、20名ほどを送客しました。3月以降は新型コロナウイルス感染症の影響で中止になったものもありますが、2月までLaLiga関連商品の集客は前年比50%増と好調でした。
牛谷 今年のゴールデンウィークには観戦だけでなく、スペイン文化としてのサッカーを学ぶ商品として、LaLigaの試合解説を担当しているサッカージャーナリストの小澤一郎さんと行くFCバルセロナ観戦ツアーも企画していました。また、HISはLaLigaとのスポンサー契約を締結するとともにスペイン商工会議所に加入しましたが、在日スペイン商工会議所の協力のもと、バスク地方への視察ツアーも造成しました。
エイバル対レアル・マドリードの試合やLaLigaの本社訪問に加えて、ミシュラン3ツ星レストランで、サステナビリティにもこだわる「Azurmendi」での食体験も組み込みこんだスポーツビジネス研修ツアーでした。どちらも新型コロナウイルス感染症の影響で中止せざるを得なかったので、事態が収束した後には実現させたいと思います。