HIS、ラ・リーガと模索する海外サッカーツーリズムの可能性
昨夏にスペイン1部リーグとスポンサー契約
「共通の価値観」で前進、観戦ツアーのその先は
エイチ・アイ・エス(HIS)は昨年7月、スペインのプロサッカー1部リーグ「LaLiga(ラ・リーガ)」と、2019-2020シーズンの日本におけるオフィシャルパートナー契約を締結した。スポーツイベントセクションで海外サッカーのチケット販売や観戦ツアーの造成などを手掛けてきた同社が、ヨーロッパでも屈指の人気を誇り、日本人選手も在籍するLaLigaと契約してから10ヶ月が経ったが、その成果はいかなるものなのか。同社取締役上席執行役員の山野邉淳氏と、スポーツ事業部所長の牛谷達郎氏に話を聞いた。インタビューは3月中旬に実施した。
山野邉淳氏(以下敬称略) スポーツイベントセクションを01年に立ち上げ、以前から海外サッカー観戦を取り扱っていた。スペインに限らず、ドイツ、イギリス、イタリアなど、時代のトレンドに合わせてチケット手配やツアー造成を続け、14年には香川真司選手が所属していたドイツのボルシア・ドルトムントと、日本におけるパートナー契約をさせていただいた。今回のLaLigaとの契約はそれに続くものになる。
LaLigaは人気の高いリーグなので、スポンサー契約のメリットとしては、まずはチケットを安定して確保できることがある。しかしそれに限らず、リージョナルパートナーとなることで、さまざまなビジネスの発展の可能性があると判断して契約を結んだ。
山野邉 まずはVIPシートを確保できることで、それ自体がプレミアムなものだが、LaLigaのVIPシートが持つ意味は日本のそれとはかなり違う。値段は確かに一般席よりも高いが、それは単なるスポンサー向けの招待席ではなく、さまざまな人々がサッカーを介して出会い、さまざまなスペイン文化を体験できる交流の場でもある。その文化を日本に伝えていくことで、これまでとは違う価値を提供できると考えた。
また、LaLigaからスポーツビジネスや集客ビジネスのスキームを学ぶことで、日本で企業向けに提供できると考えた。契約金はかなりの額に上るので、社内でも反対の声はあったが、チャレンジするには十分だと思った。
山野邉 アジアでの知名度向上の拠点を得ることが最大のポイントだと思う。LaLigaには日本人選手も在籍しているので、ファンも多い日本はマーケティング戦略上、重要な市場と考えたのだろう。また、サッカーをきっかけとして、スペインを訪れる日本人旅行者が増えることへの期待もあると思う。しかし、これまではその受け皿となる大きなエージェントがアジアや日本にはなかった。
我々からは「単なるスポンサーになるのではなく、『事業パートナー』としてであれば契約したい」と伝えた。するとLaLigaも「一緒にビジネスチャンスを創出して、事業を拡大していけるパートナーを探している」とのことで、お互いの認識や価値観が一致していた。双方が同じ立場でリーグを育て、お客様に楽しんでいただくという考え方で、お互いの事業を核としながら、旅行会社やサッカーリーグ以上のものを創り上げていきたいと思った。