復興庁「新しい東北」拡大交流事業、4年の成果-外国人「150万人泊」の前倒し達成にも貢献[PR]
地元の連携で多彩な観光コンテンツ創出
復興・創生の新たなステージへ観光業の期待大きい
東南アジア富裕層向け商品開発で東北5県のDMOが連携
その取り組みの1つが、山形を拠点とするテレビ局、テレビユー山形を主体事業体とする「タイを拠点とした東南アジア富裕層の誘客拡大と受け入れ基盤の強化」だ。この取り組みが目指したのは、2019年秋に東北のゲートウエイである仙台空港への定期便就航が決まったタイと、これまで東北へのインバウンドを支えてきた台湾という2つの国の富裕層へのコンテンツ開発および誘客拡大だ。
具体的には、ターゲットとする富裕層を招いてのファムツアーの実施、参加者からの意見聴取、タイや台湾に向けたプロモーションやセールスなど様々な活動が実施された。
同事業を担当した復興庁主査の古谷俊英氏によれば、「効果的だったのはモニターツアー。仙台市長も交えた意見交換も行い、ターゲット層の具体的な要望を知ることができた」とのこと。定番の寺社観光だけでなく、ナイトタイムエコノミーの要素が高評価を得るなど、「伝統とトレンドの組み合わせ」に対する需要も発掘できたと評価する。
同事業のもう1つの大きな目的は、青森、岩手、秋田、山形、福島という東北5県のDMOの連携強化だ。テレビユー山形営業局事業部・営業局次長兼事業部長の鈴木健一郎氏は「各県のDMOが連携した事業は今回が初。さまざまな活動を通して、こうしたDMO同士のつながりができたことは大きい。DMOと組むことで、各地域の魅力を掘り起こせることもあらためて認識できた」と振り返る。
古谷氏、鈴木氏ともに今後の課題とするのは「このつながりをいかに継続させるか」。現時点では一つの組織を立ち上げるまでには至っていないが、「連携を進めていくための準備が整ったことは大きな収穫」と古谷氏。
同事業の活動中には、連携事業者に名を連ねていたみちのくインバウンド推進協議会が、タイを専門に東北の広域観光ルートを手がけるランドオペレーター事業所「みちのくツアーズ」を仙台市に開設するなどの動きもあった。鈴木氏は「今後、こうした広域観光の受け皿が増え、地元の事業者が地元のために取り組める環境が整えば」と期待を寄せる。
暮らしやものづくりをテーマに東北の「ハレとケ」を体感
もう1つ、ユニークなプログラムが展開されたのが、第一広告社を主体事業者とする「The Legends of TOHOKU〜ハレとケを体感する物語〜」だ。同社は前年度、祭りに焦点を当てた「TOHOKU WONDER PROGRAM」の事業に取り組んでおり、それを踏まえ、今年度は、日常生活やものづくりをテーマにした事業を新たに提案した。
具体的には、東北6県で特徴のある地域の素材を掘り起こし、地域の住民と深い交流のできる10のプログラムを造成。イギリス、スペインを中心とする欧米をターゲットにプロモーションと販売を行い、プログラムを実施した。
「特にヨーロッパの人たちには日本の文化が響く。紹介すればするだけ、もっと知りたいという姿勢を見せてくれる」と語るのは、第一広告社地域振興支援室・室長の伊藤愛発氏。今回の事業では、こうした志向を受け、PR動画に職人のインタビューなどを盛り込み、視覚的なものだけでなく説明の要素も充実させたという。これらのツールを持って現地旅行会社を訪問するなど、積極的なプロモーションを行った結果、イギリスでは団体旅行商品のシリーズ化も実現した。
同事業を担当した復興庁専門調査官の佐々木亮氏は「東北の文化や日々の暮らしにスポットを当て、文化の継承という観点から商品化するという着眼点が素晴らしい」と語るとともに、「当初、日常生活をどう外国人に伝えるのか、伝わるのかという懸念もあったが、字幕などの工夫もあり、参加者の理解を得た」とその手法についても評価する。たとえば、岩手県遠野市でのプログラム「昔語り」では、訛りのある語り部の話とともに、外国語の字幕を映写することで、参加した外国人は耳と目で文化を理解、それが好評につながった。
さらに、「祭り同様、各地の文化も担い手が少なくなっている。こうした文化を観光コンテンツとして昇華させることで、海外の人に楽しんでもらうとともに、地域の価値を守ることにも寄与したい」と語る伊藤氏が、今回の大きな成果と感じたのは、地域の観光協会や施設など受け入れ側の意識の変化だ。
ちょっとした工夫を施すことで、海外から訪れた人たちに地元の文化を伝えることができる。こうした経験が成功体験として身につき、自ら活動するようになったという。「なかなか生まれなかったインバウンドの機運を醸成できた」と伊藤氏は手応えを語る。
このほか、福島県福島市の土湯温泉では、以前からFITに人気の宿を拠点にこけし作りの体験プログラムを実施。宿泊者のほとんどが参加する人気プログラムとなっただけでなく、他のゲストハウスの宿泊客も評判を聞きつけて参加するなど好評を博した。FIT向けの着地型商品の不足という課題の解消の一助にもなった形だ。