大台達成後のアウトバウンドの行方は-新たなJATA海旅部長に聞く

元KNT-CT役員の稲田正彦氏が就任
新型コロナ後の回復は「潮目見逃さず」

稲田氏  日本旅行業協会(JATA)はこのほど、權田昌一氏に代わる新たな海外旅行推進部部長として、同じKNT-CTホールディングス出身の稲田正彦氏を任命した。2019年の出国者数が前年比5.9%増の約2008万人となり、旅行業界が長年目標としてきた2000万人を達成したタイミングでの交代となったが、海外旅行の推進に主眼を置くJATAは今後の目標をどのように定めるのか。また、權田氏の代に立ち上げたアウトバウンド促進協議会や、「ハタチの一歩 20歳初めての海外体験プロジェクト」はいかにして発展をめざすのか。就任直後の稲田氏に話を聞いた。

-最初に、これまでのご経歴 について教えてください

稲田正彦氏(以下敬称略) 1983年に当時の近畿日本ツーリストに入社し、16年間は主に法人や団体の営業に携わった。その後は海外旅行部長などを経て、2011年から13年までは訪日旅行部の初代部長を務め、さらにユナイテッドツアーズの社長やKNT-CTホールディングスの執行役員事業戦略統括部海外旅行部長、KNT-CTグローバルトラベルの社長を経て、19年6月からJATA海外旅行推進部の副部長となり、今年の1月1日付で部長に就任した。

-出国者数2000万人の達成について、感想や分析をお聞かせください

稲田 率直に言って嬉しい。旅行業界全体の力で達成した目標であり、すべてのステークホルダーの努力に敬意を表したいと思う。一方で、旅行会社による取扱比率は落ちており、手放しで喜んではいられないという思いもある。

 JATAが2000万人の目標を掲げた07年当時の出国者数は1700万人台で、観光庁の統計によれば、主要旅行会社50社の募集型企画旅行が占める人数シェアは28%だった。ところが19年は出国者数が2000万人を超えたものの、シェアは10.1%にまで減少している。旅行会社の取り扱いにおいて募集型企画旅行よりも、手配旅行である単品販売のシェアが増えたことが要因ではあるが、流通が大きく変わり、海外OTAなどが市場に参入した影響は大きい。

 目標を達成したことは、もちろん評価すべきだ。ただし、07年当時に業界が思い描いていたような2000万人時代の収益構造にはなっていない。何とかして旅行会社がリードする旅行像を作っていかねばならず、そのために我々はもう、次のステップに移っていることを強調しておきたい。

-次なる目標はどのように設定しますか

稲田 2000万人を超えたからと言って、すぐに2500万人、3000万人といった数値目標を掲げる考えはない。まずはインバウンドの存在感が増してきたことを意識しなくてはならず、2000万人の達成もインバウンドとアウトバウンドの双方が伸びるなかでこそ達成できたものだと思う。

 例えば台湾やタイなどのようなデスティネーションは、インバウンドとアウトバウンドの両方に力強い成長があるので、双方向で折衝するメリットを考える必要がある。先方が旅行者数を増やし、日本からも増やすことでうまく連携することができる。

 また、市場ごとの特性に合わせた取り組みが大事で、大所の中国、韓国、台湾、タイ、米国や、このところ急伸しているベトナムなどは数を意識した取り組みが必要だ。双方向交流の増加により、航空座席の供給がどのように変化するかも見越した上での対応が重要になる。その点では、新たな路線開設が進んでいるロシアの伸びしろもかなり大きいと見ている。