ツーウェツーリズム時代における関空の強みとは?-ツーリズムEXPO
インバウンド4000万人時代にアウトバウンドの商機は
バランス良い東南アジア、欧州に可能性も
アウトバウンド需要における欧州の強化
パネルディスカッションでは、東南アジア以外の可能性として欧州にも言及。AYの永原氏は自社の取り組みについて「他社と同じような戦略では勝ち目がない」ことから、「最大の武器であるヘルシンキの地理的優位性を活かし、アジアから欧州へのハブとして生き残る選択をした」と説明した。AYは、日本では1983年に週1便で就航したところから着実に実績を積み重ねて2019年夏には週34便を運航し、今年12月には新千歳/ヘルシンキ線の就航も予定している。
また、遠藤氏は「ツーウェイツーリズムを促進する持続可能な顧客開発の取り組みにおいて、インバウンドが拡大していく中でいかにアウトバウンドの需要環境を展開していくかが旅行会社の課題だと考えている」としたうえで、JTBが20年にグローバルデスティネーションキャンペーンで欧州を取り上げることを紹介。17年のシンガポール、18年のオーストラリア、19年のハワイに次いで、来年は欧州への送客に力を入れることになる。
黒須氏は欧州の課題について、「あくまでもデータ上ではあるが、若年層の欧州に関する好感度が、上の世代と比べて低い傾向がある」と指摘。これに対して遠藤氏は、欧州旅行を検討する若年層が店舗での相談を希望するケースが増えていることを紹介。そのうえで、「根幹にはテロなどによって欧州に対する不安感があると考えられる」とし、店舗を通じた安心感の提供などによって若年層の欧州旅行を盛り上げていきたいと意欲を語った。
また、永原氏も「20代の女性が40%近く欧州に興味を持っているのは、決して小さい数字はないと思う。まだまだ伸びしろはある」とコメント。そして、「欧州には多くの観光資源があるものの、紹介しきれない、商品に落とし込みづらい部分もある」ことが課題であるとし、「我々も知らないようなデスティネーションを模索しつつ、若い世代の女性に、目的を明確に見せて興味を持ってもらうことを意識して商品を作っていけば伸びる可能性はあるだろう」と語った。
このほか黒須氏は、別の課題として近畿居住の旅行者が欧州方面へ出国する際、4分の1が関空以外の空港を利用している点を挙げた。「ロングホールは価値のある市場なので、できるだけ地元の空港を利用していただきたい思いがある。旅行者も関空を応援することで、ツーウェイ時代を乗り切ることが大事だと考えている」と黒須氏。
黒須氏の指摘を受けて遠藤氏は、旅行会社として関西市場のニーズを捉えた独自商品を作る必要があると考えていると説明。「関西の方の食に対するこだわりの強さを活かした企画や、LCCを使ったパッケージづくりに着目し、取り組みを進めていきたい」と展望を語った。
パネルディスカッションの最後、黒須氏はまとめとして、旅行会社は「まずはアジアにアンテナを張り、次に次世代へ欧州の魅力を繋ぐことが役割のひとつ」と語り、「今後も関西空港発の便は拡充されていくはず。しかし、付加価値を付けないと選んでもらえない。旅行会社だけではなくリテールも含めてチャンスを探って欲しいと願っている」と締めた。