アイルランド、25年に日本人客倍増へ-政観トップが活動強化を明言
アイルランド政府観光庁長官のナイル・ギボンズ氏がこのほど来日し、旅行業界誌記者の取材に応じた。ギボンズ氏は、同国を訪れる日本人旅行者数が現在は約2万4000人であるところを2025年までに倍増する計画であること、さらに旅行業界との関係強化をめざし、2020年には日本旅行業協会(JATA)トップらがアイルランドを視察する予定であることなどを説明した。
ギボンズ氏によると、2018年の全世界からの旅行者数は約1120万人に上り、アイルランド共和国の人口約670万人の2倍近い旅行者を受け入れているところ。主要な市場は英国、米国、フランス、ドイツで、これら4ヶ国が全体の7割を占めており、残りの3割のうちアジア市場についてはドバイにヘッドオフィスを置いてマーケティングおよびピーアールに当たっている。
アジアの急成長市場は中国とインド、そしてダブリンへの直行便のあるUAEだが、日本も「数こそ小さいが、文化に理解の深い成熟市場であり、主要ターゲットのひとつ」という。ギボンズ氏は、アイルランドの歴史や多様な文化。自然、安全性やホスピタリティの高さなどに言及したうえで、日本市場においては文化などに興味を持つシニア層、ソーシャルメディアを駆使する若者層を主なターゲットとして、同局で開設している日本語ホームページを通じて情報を発信していく方針を説明した。
さらに、2013年に閉鎖した観光局再開についての明言は避けたが、2022年に東京新宿区四谷にオープン予定のアイルランドハウス内に本国観光局から観光担当者を配する計画も明らかにした。このほかメディアに対するFAMトリップなどを実施し、ラグビーW杯や2020年のオリンピック・パラリンピックなどのイベントを活用しながら、消費者に対する認知度を高めていく。
また、「新市場開拓に必要なのは空路のアクセスと、ブランドの構築」であるとの考えから、特に航空便については、チャーター便や期間限定の直行便運航など、様々な可能性を探りながら検討していく考えだ。
旅行会社に対しては、現在アイルランドを訪れる際に旅行会社を利用する英国人は約7%に留まっているのに対し、「アジアからの旅行者は7割から8割が旅行会社を利用している」ことを紹介。そして、トーマス・クックの破綻に触れつつ、「OTAなどで旅行業を取り巻く環境は変わりつつあるが、ロングホールであればあるほど旅行会社の必要性は高まる。アイルランドにとって、日本の旅行会社の存在は非常に重要だ」とした。
そのうえで、2020年のJATAトップらによる視察旅行だけでなく、「今回の来日を機に、日本の旅行会社と長期にわたるしっかりとした関係を築いていきたい。旅行会社に対するFAMトリップなどを通してアイルランドを体験してもらい、商品造成に生かしてほしい」と意欲を語った。
なお、英国のブレクジットの影響は「正直なところ、どう動き、変化していくのかは英国本国もEUとしてもまだ不透明」。しかし、アイルランドについては「島内には2つの国があるが、消費者にとってアイルランドは一つの島」という視点に基づき、20年ほど前から南北アイルランドがともに「アイルランド島」としてプロモーションを展開しているところで、「今後もこの方策に変更はないはず」との認識だ。