週間ランキング、1位はDLの成田撤退(と羽田シフト)、HISのTOBも

[総評] 今週の1位は、デルタ航空(DL)が成田を撤退する計画であることをお伝えした記事でした。ノースウエスト航空時代からの歴史や日本市場にとっての重みを考えると当然の順位でしょう。「日本の需要は羽田で、日本以外のアジアは大韓航空と」という姿勢を鮮明にするもので、寂しさは否めません。経営再建時の日本航空(JL)がスカイチームに移っていたらどうなっていたか、などと考えても何の意味もありませんが、つい想像してしまいます。

 続いて2位は、エイチ・アイ・エス(HIS)によるユニゾホールディングスへの株式公開買付(TOB)について、ユニゾ側がTOBに反対する意見表明を出したことをお伝えした記事でした。

 これで敵対的TOBとなることが確定したわけですが、気になるのはHISのTOB発表後に米国のファンド会社が5%強を取得して筆頭株主に躍り出た件で、そのファンド会社はトラベルポートを買収したエリオット・マネジメントです。トラベルポートとユニゾの間には一切関係ないと思いますが、ハゲタカなどと恐れられるエリオットの参戦はHISにとっても予想外だったのではないでしょうか。

 事実、HISにとってもTOB価格の1株3100円に対してエリオットの取得額は平均約3300円とされ、また株価も8月7日には3710円をつけたようです。HISがどのように判断するのか、エリオットがどう動くのかなど経済小説さながら様相で、第三者としては見ごたえのある展開となってきています。「澤田さんのことだから意地でも…」などと思う部分もなくはなく、そういった意味でもやはり今後も注目は続いていくのでしょう。

 また、5位には日本旅行が富裕層をターゲットに「コンシェルジュ・デスク」を開設したという記事がランクインしました。あまり個別の会社の取り組みにケチを付けるようなことはしたくないのですが、私自身がかつてフォーシーズンズホテルで働いて時間帯によってはコンシェルジュの手伝いもし、あるいはトラベルビジョンの記者として大手から中小まで様々な富裕層対策を見てきたなかでは、少々物足りないような気がするのが率直な感想です。

 今回の施策は、資料から読み取る限り「専用ブースを設置する」「専用の制服と名札を着用する」「優秀なスタッフを配置する」「完全予約制とする」「相談中に飲み物を提供する」ことが主な特徴ですが、最初の2つはデスクを設置した2店舗のうちTiS大阪1店舗のみということです。つまり共通するのは「スタッフ」「完全予約制」「飲み物」だけで、大切なのは箱ではなく中身ではありますが、もう少し特別感を出せたのではないかと思ってしまうのは私だけでしょうか。

 フォーシーズンズホテルの標語のたぐいのなかには今でも仕事に役に立っているものがいくつかありますが、なかでも「Wow Me if You Can」は印象に残っています。正確には私の退職後に掲げられたものだった気もしますけれども、「Wow!凄いな!」と思わせてこそ、つまり相手の期待値や予想を超えてこそ、という考えは、富裕層に限らずサービス全般において非常に根本的で重要な要素ではないかと感じます。

 その意味では、日本旅行のコンシェルジュ・デスクの皆様は選びぬかれた精鋭ということで「Wow!」の種はいくつもお持ちでしょうし、そこが勝負どころとなるでしょう。そうであれば、旅行相談での来店に限定せず、それこそプライベートコンシェルジュのように日頃から電話やメールも活用してお客様と接点を持てたりすると面白いと思うのですがいかがでしょうか。まあ富裕層といっても色々でしょうし、そもそも私は富裕層であった経験もありませんので、ただの放言とお考えいただければ幸いです。

 このほか最近は韓国や香港が落ち着かず、特に韓国はレーダー照射や徴用工訴訟など親韓派でも眉をひそめるような事態が続き悩ましく思います。一方、愛知県での「平和の少女像」の展示を巡る問題については、心情はどうあれ、表現の自由という意味においては逆に、マジョリティにとって多少の不快感を伴う表現こそ守られなければならないはずで、そうであるにも関わらず政治家が公然と展示中止を求め国民がそれを許容する流れは息苦しさを覚えます。

 自分が言いたいことを言うためには、聞きたくないことを他人が言う権利も認めるのが筋であり(もちろんヘイトは別です)、旅行業界にとってもそういう寛容性、多様性なくして旅は成り立たないのではないかと思います。

 なお、来週は火曜日から土曜日までを夏の休刊期間とさせていただきます。出勤はしておりますので重要なニュースなどがある場合はウェブサイトを更新し、さらに緊急性が高いと判断されるものについては号外メールをお送りします。厳しい暑さが続くなか、お仕事をなさる方、家族旅行や帰省をされる方、家で体を休める方など様々かと思いますが、どうぞご自愛いただき体調を崩されることのないようお祈り申し上げます。(松本)

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