KNT-CT社長交代、近鉄グループ取締役の米田氏が就任へ
KNT-CTホールディングスは5月10日、現代表取締役社長の丸山隆司氏が代表取締役会長に就き、後任に現近鉄グループホールディングス取締役常務執行役員の米田昭正氏が就任することを発表した。6月19日の定時株主総会とその後の取締役会で正式に決定する。
KNT-CTでは、2017年に丸山氏が就任した後、「集中と分散」を掲げて組織を再編し地域密着型の事業展開に転換。18年には3ヶ年の中期経営計画も発表した。しかし、10日に発表した決算では19年3月期の実績、20年3月期の予想ともに中計の目標値を下回り、特に20年3月期の予測値では売上高が目標4420億円に対して4225億円、営業利益が目標45億円に対して30億円と苦戦を強いられている。
10日に開催した記者会見で丸山氏は、「当初思っていたよりも経営環境が非常に厳しい」と認めたうえで、「急務の課題」として取り組んでいる個人旅行事業の改革が難航していることを説明。また、7000名の従業員を抱えるグループを経営するうえで「自分だけでは十分にはリーダーシップを発揮できないということもあった」といい、丸山氏がCEO、米田氏がCOOの役割を担うことで、「力を合わせて難関を突破していきたい」との考えだ。
米田氏は鳥取県の出身で、1960年2月12日生まれの59歳。1982年に当時の近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)に入社し、駅での助役などを務めた後、アメリカ近鉄興業副社長・都ホテルロサンゼルス総支配人や、近鉄ホテルシステムズで常務取締役としてウェスティン都ホテル京都の総支配人や伊勢志摩サミットの対策室長などを歴任。延べ20年近い米国駐在の経験もあって海外経験が豊富で、直近では近鉄グループホールディングスの取締役常務執行役員として事業開発部(海外事業)、東京支社、名古屋支社、台北支社を担当していた。
米田氏はこれまでホテル側の立場で旅行業界に関わってきたものの、旅行会社の経営に携わるのは今回が初めて。この点について米田氏は、「ホテルも旅行も同じホスピタリティ産業。基本は顧客に喜んでいただくことで、自分たちが幸福を感じるのがホスピタリティ産業の真髄」とも語り、顧客とサプライヤーとの「三方良し」をめざすと意欲を語った。
また、業界全体でWeb化や直販化が進んでいることについては、「ホテル側にいたのでダイレクトマーケティングを進めている方の人間だった」としつつ、「Webはツールであって、中身はあくまでも人が中心になって推進していくもの」であると分析。そのうえで「OTAではない、高付加価値の商品をいかに追求していくかが総合旅行会社の役割。その違いを追求していかなければならない」と意欲を語った。海外経験を生かしてグローバル戦略も強化したいという。
個人旅行事業の改革では、メイトとホリデイの立て直しに向けて近畿日本ツーリスト(KNT)とクラブツーリズム(CT)のさらなる一体化を進めるとともに、「Webファースト」の方針も堅持する。一方、MICEや修学旅行、スポーツ、訪日などの事業領域でも課題への対応を進め、さらにAIなどの技術活用も模索する。例えば修学旅行では、専用の支援システムを開発してすでに企画提案に活用しはじめているという。
なお、KNT-CTホールディングスのイメージを聞かれた米田氏は、「KNTは、はじめは野武士集団だったかもしれないがスマートになってきている。とても営業力が強い、交渉がとても厳しい会社」とコメント。そしてCTについてもホテルでの経験から、「とても楽しそうな会社。お客様と添乗員が遊びに来ているような、とても仲が良さそうで、食事も賑やか」などと表現。そのうえでKNT-CTとしては、両社の強みを発揮していくことが重要との考えを語った。
米田氏の略歴と役員異動の詳細は下記の通り。(6月19日付の役員異動の詳細はこちら)
米田昭正氏 略歴
1982年04月 | 近畿日本鉄道(現 近鉄グループホールディングス)入社 |
2000年05月 | アメリカ近鉄興業 副社長 都ホテルロサンゼルス総支配人 |
2008年09月 | 同社 代表取締役社長 |
2012年04月 | 近畿日本鉄道 ホテルレジャー事業本部 ホテル事業部長 |
2012年06月 | 近鉄ホテルシステムズ(現 近鉄・都ホテルズ)取締役企画・営業本部 企画部部長 |
2013年12月 | 同社 取締役シェラトン都ホテル大阪 総支配人 |
2015年04月 | 同社 常務取締役ウェスティン都ホテル京都総支配人 |
2015年07月 | 同社 常務取締役伊勢志摩サミット対策室長 |
2016年06月 | 近鉄グループホールディングス取締役常務執行役員 事業開発・グループ連携推進部担当 |
2016年11月 | 同社 取締役常務執行役員 事業開発部および台北支社担当 |
2018年06月 | 同社 取締役常務執行役員 事業開発部(海外事業)、東京支社、名古屋支社および台北支社担当(現在) |