本気のエコ&ラグジュアリー、西豪州「サルサリス」宿泊レポート
ネットもスマホも役立たず
世界遺産で過ごす豊かな時間
この記事をトラベルビジョンのウェブサイトで読んでいる時点で貴方は日頃からインターネットに慣れ親しんでおられるはずだが、この数年でインターネットどころか電話もできない環境に身を置いた方はどれくらいいるだろうか。「デジタルデトックス」なる言葉があるが、通信したくてもできない話だ。あるいは、いわゆる汲み取り式のトイレで用を足した方はどれほどだろう。しかも1泊1人7万円以上を支払って、となると皆無ではないか。「世界遺産内に宿泊する5ツ星相当のエコキャンプ」での宿泊とはどのようなものか、2泊して感じた実際をレポートする。
エコは楽じゃない?世界遺産内で営業する大変さ
旅行商談会「オーストラリア・ツーリズム・エクスチェンジ(ATE)」の併催FAMツアーで訪れたのは、世界遺産「ニンガルーコースト」の地。ジンベイザメと一緒に泳ぐ体験で知られる場所だ。今回もジンベイザメを間近に見る機会を得たが、その邂逅については、同地が世界遺産に指定された2011年にもレポートを掲載しており(リンク)、ジンベイザメの生態や姿かたちが変わったわけではないので思い切って割愛する。
今回書くのは、ニンガルーコーストの玄関口であるエクスマウスの市街地から南に車で約1時間、ケープレンジ国立公園内に位置する宿泊施設「サルサリス・ニンガルーリーフ」について。今年に入って同施設を買収したジャーニー・ビヨンド関係者の言葉を借りれば「5ツ星相当のエコフレンドリーなサファリキャンプ」で、世界遺産内の半常設テントに宿泊することが最大の特徴だ。
宿泊料金は、オールインクルーシブとはいえ2人利用で1泊1人900豪ドル(約7万2000円)と結構な額だが、いわゆる「グランピング」的な施設とは言えるかは微妙。昨今はキャンプ要素がおまけのような豪華なグランピング施設も出てきているが、サルサリスはエアコンどころか扇風機もなく、テントのトイレは汲み取り式(臭気はなし、ロビーや宿泊場所を兼ねるメインロッジは水洗)、テントで使える電気は太陽光発電でコンセントなし(USBソケット2つと僅かな照明のみ、メインロッジにはコンセントあり)、そしてテントで使用可能な水は1泊20リットル限定など、かなりハードな条件を揃えている。
それもこれもサルサリスが世界遺産のなかで営業しているためで、夏季期間の休業時にも前後それぞれ2、3週間かけてすべてのテントをほぼ完全に畳むなど、環境負荷を最低限とするため努力を積み重ねているという。
そう聞けば「なるほどやむを得ないか」とは思うのだが、いざ泊まるとなるとそう簡単ではない。今回の2泊中の1泊はサイクロンが近付いたためにひと晩中テントがバタバタと煽られて何度も目が覚めたし、夜も暑くて寝付けなかったという参加者もいて、色々とハードルの高さは否めない。
そもそも、冒頭に触れた通り外部との接触が一切不可能なのだ。日常生活を忘れてリラックス、のはずが、家族になにかあっても仕事上でなにかあっても、あるいはそれこそ日本やどこかで災害や大事件が起きてもこちらから連絡できず情報収集もできないとなると、逆に心のどこかに常に不安を感じてしまうかもしれない。