海外医療通信 2018年11月号【東京医科大学病院 渡航者医療センター】
※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです
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東京医科大学病院・渡航者医療センター
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・海外感染症流行情報 2018年11月号
(1)WHOの黄熱ワクチン推奨国・要求国リストが改訂
WHOのホームページに掲載されている黄熱ワクチン推奨国・要求国リストが11月に改訂されました。http://www.who.int/ith/ith-country-list.pdf
主な改訂箇所としては、今年前半のブラジルでの黄熱流行を受けて、ワクチン推奨地域が南部のサンパウロやリオ・デジャネイロなどに拡大している点があります。また、コロンビア、パナマが流行国からの入国者に対して、黄熱ワクチンの接種を要求することになりました。
(2)全世界の最新マラリア流行状況
WHOは11月にWorld Malaria Report 2018を発表しました(WHO 2018-11-19)。2017年は全世界のマラリア患者数が2億1,900万人にのぼっており、このうち92%はアフリカでの発生でした。この数は2010年に比べて2,000万人減少していますが、2015年以降はやや増加傾向にあります。マラリアによる死亡者数は2017年が43万人で、2010年の60万人に比べ顕著な減少がみられました。
(3)サウジアラビアでのMERS患者発生
サウジアラビアでは今年の9月中旬から10月末までに、中東呼吸器症候群(MERS)の患者が12人発生しました(WHO Disease outbreak news 2018-11-1,11-20)。患者の発生地域は首都リヤドが6人と最も多く、感染経路はラクダとの接触が4人、感染者との接触が4人でした。2012年にMERSの流行が確認されてから、全世界での累積患者数は2,266人になり、このうち804人が死亡しています。
(4)コンゴ民主共和国のエボラ熱流行
コンゴ民主共和国の北東部で発生しているエボラ熱の流行は11月も続いており、累積患者数は386人(疑いを含む)になりました(WHO Disease outbreak news 2018-11-22)。このうち219人が死亡しています。WHOはワクチン接種などで流行対策を行っていますが、11月に入ってからの患者数は96人と大きな変化はありません。ウガンダ国境付近の新たな地域でも患者が確認されました(WHO Disease outbreak news 2018-11-15)。今回の流行は治安状況が悪い地域で発生しており、WHOなどによる対策を阻む大きな要因になっています。
(5)イギリス人旅行者が狂犬病で死亡
イギリス人旅行者がモロッコ滞在中にネコに噛まれ、帰国後、狂犬病を発病し、死亡しました(英国NaTHNac 2018-11-12)。イギリスでは海外で感染した狂犬病患者が2000年~2017年に5人発生しています。狂犬病はイヌからの感染が90%以上を占めますが、ネコやサルなど哺乳動物全般にも感染リスクがあります。この話題については、渡航者医療センターの濱田が以下のサイトで解説しているのでご参照ください。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181125-00000012-mai-soci
・日本国内での輸入感染症の発生状況(2018年10月8日~2018年10月28日)
最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査を参考に作成しました。出典:https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2018.html
(1)経口感染症:輸入例としては細菌性赤痢6例、腸管出血性大腸菌感染症7例、腸チフス・パラチフス8例、アメーバ赤痢8例、A型肝炎5例、E型肝炎1例、ジアルジア2例が報告されています。細菌性赤痢はモロッコでの感染が3例、腸チフスはインドなど南アジアでの感染が6例と多くなっています。
(2)昆虫が媒介する感染症:デング熱は15例で、前月(28例)より減少しました。感染国は前月と同様にフィリピンが5例と最も多くなっています。マラリアは5例で、全例がアフリカでの感染でした。マダニから感染するライム病が1例報告されており、フランスでの感染でした。
(3)その他:麻疹が1例(感染国:フィリピン)、風疹が5例(感染国:韓国、タイ、米国、ジャマイカ、チリ)報告されています。百日咳は1例報告されており、中国での感染例でした。タイでレプトスピラ症に感染した1例が報告されています。淡水に接触して感染する病気で、ラフテイング中に感染したとみられています。
・今月の海外医療トピックス
タバコ大国中国
先日、出張で中国に滞在しました。そこで、お会いした日本人駐在者の喫煙率の高さに驚きました。「なんとか禁煙できませんか?」とたずねると、「それはできません!」という返事の多さにも驚きました。吸わずには居られないほどの多忙さもあるでしょうが、中国には、『たばこを交わす』という風習が根強くあります。中国人の同僚たちと仕事の合間にたばこを交わす。“以煙待客”(たばこで客をもてなす)という言葉があるほど、親交を深めるためにはタバコは欠かせないそうです。
中国は世界最大のタバコ生産国であり消費国です。WHOのデータによると、世界の喫煙者の3人に1人は中国に住み、世界で製造されたタバコの約44%が中国で消費されています。中国政府は数年前から都市部に禁煙令を出しているようですが、今後、さらに禁煙ムードが高まることを願っています。(医師 栗田 直)
参考:WHO : Tobacco - China’s addiction to an outdated and impoverishing economy http://www.wpro.who.int/china/mediacentre/releases/2017/20170414-tobacco-report/en/
・渡航者医療センターからのお知らせ
(1)第22回渡航医学実用セミナー(当センター主催)
次回の渡航医学実用セミナーは下記の日程で開催する予定です。プログラムの詳細は次号のメルマガでお知らせします。
・日時:2019年2月21日(木) 午後2時00分 ~ 午後4時30分
・会場:東京医科大学病院6階 臨床講堂
(2)当センターでの黄熱ワクチン接種
11月から日本国内での黄熱ワクチンの接種は「黄熱ワクチン(スタマリル)接種後の安全性を調べる特定臨床研究」として実施されています。当センターでも12月からこの方式での接種になります。詳細は当センターのホームページをご覧ください。 http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/tokou/yellowfever.html