JTBが「旅革命」、欧州に自前の周遊バス、FIT化の流れつかむ
JTBは11月21日、「欧州旅革命」のスローガンのもと2019年4月からシートインコーチ(SIC)型の周遊観光バスを日本市場に特化して運行する計画を発表した。サービスは「ランドクルーズ」と名付けたもので、陸上のクルーズのように欧州12ヶ国で総延長1万4000キロメートル超の区間を運行。旅行者は好きな区間を1区間から選んで利用できるようにする。
JTB取締役グローバル事業本部長の井上聡氏によると、新サービスは市場全体のFIT化が進み、さらに訪日需要の高まりもあってまとまった数の座席が確保しにくくなるなどパッケージツアーを取り巻く環境が厳しさを増すなかで挑戦を決めたもの。完全なFITに比べて利便性が高く、また料金面でも低価格で済む点を打ち出し、他社への卸売にも積極的に取り組んで需要を獲得していくねらいだ。初年度の目標取扱人数は5000名だ。
井上氏は決断に至った問題意識として、「パッケージのニーズはまだなくならないと思う」と予測しつつ、「しかし我々はそれしか提供してこなかった。言いすぎかもしれないが、それを他社と価格で競争してきただけだった。これではお客様が本当に思っていることを実現できないし、我々もチャレンジしていない」と語った。
現地サービスは添乗員付きツアー並み
ランドクルーズの商品は、ホテルでの前泊と朝食、そしてバスでの移動と観光が基本の組み合わせで、前泊のホテルロビーで集合し目的地で下車して解散となる。全コースとも1名でも催行を保証。実際にはバスが定期的にルートを運行するため、ある区間に参加者がいなくても電車のように次の区間に向けて移動することとなる。バス内には日本語を話す現地係員が同乗し、添乗員付きツアーと同じレベルの現地サービスを提供する。
訪問先の過ごし方では、説明が必要なければ自由行動、そうでない場合はガイドまたは係員による案内と2パターンを用意。ガイドによる案内は、例えば入場料や予約が必要な観光スポットでも予め入場料は旅行代金に組み込んでおき、予約もしておくことで効率良く便利に観光できるようにする。また、自由行動でもお勧めの時間の使い方などを案内するという。このほか、昼食の有無はコースによって異なるが、夕食はアルベルベッロに宿泊する以外は含まず、希望に応じて係員からお勧めの店を案内する。
他社ツアーへ素材として供給も
旅行代金は、約130区間の平均で約2万2000円。基本的には11月29日に開設予定の専用ページで申し込みを受け付けるが、店舗と電話予約では3区間以上をセットにした現地発着の募集型企画旅行「ランドクルーズJTB」として80コースを専用パンフレット化。これにより店頭でも扱いやすくして浸透をはかる。また、1月からはJTBお買得旅でも15コースを商品化する。
他社経由の販売にも積極的で、従来のパッケージツアーと同等のコミッションを支払うほか、オンラインでのアフィリエイト契約も視野に入れる。さらに、他社の独自ブランドツアーにカセットプランとして組み込んでもらうことも提案していく。このため、現地ではJTB色を出さずに「MyBusランドクルーズ」ブランドを前面に据える工夫もするという。
井上氏によると、今回の「ランドクルーズ」事業では年間4億円の費用が発生するが、環境変化のなかでの挑戦として取り組むことを決めた。また、従来は発地である日本側で営業の責任を持っていたが今回は現地に委ねており、この点でも「革命」的であるという。
なお、11月29日の販売開始以降、先着500名は旅行代金を半額とするキャンペーンを予定。また、19年下期以降には新ルートや新商品の開発も予定しており、さらに将来的には欧州以外のエリアも「可能であれば挑戦したい」という。