JATA菊間氏、19年の2000万人達成に意欲、東京五輪による出国者減に懸念

  • 2018年11月14日

 日本旅行業協会(JATA)のアウトバウンド促進協議会(JOTC)は11月13日、臨時全体会議を実施した。冒頭に登壇した会長の菊間潤吾氏は、「9月の関空閉鎖や北海道地震の影響を少し心配したが、9月までの出国者数の累計は4.4%増。2012年に達成した1849万人を超えることができそう」とコメント。2020年の海外旅行者数2000万人の目標に対しては、「20年は東京五輪があるので、7月、8月の海外旅行は停滞するのでは。他国の五輪開催期間の出国者数を見ると、前年の7割程度のケースもあった」と懸念を語り、「19年のうちになんとか2000万人を達成できれば」と意気込みを述べた。

 会議では観光庁長官の田端浩氏が「アウトバウンド促進協議会と観光政策」をテーマに講演を実施。菊間氏の懸念を受け、「休暇改革を実施し、例えば9月にまとめて休みを取って海外に行ってもらうなど、7月、8月の減少を減らす対策を今からしっかりしていきたい」と語った。

 講演で同氏は、国がこれまで取り組んできた休暇改革について改めて説明。20年までに、現在は5割だという有給休暇の取得率を7割にする目標を示した上で、「より多く休みが取れると海外旅行にも行きやすくなる。取り組みをさらに進めるための協議体、実行組織を作るなど、色々な仕掛けをしていきたい」と話した。

 11年から取り組む、企業と連携して休暇を取得して外出・旅行を楽しむことを積極的に促進する「ポジティブ・オフ」運動については、800社が参加していることを説明。「休暇が増えれば時間がかかる遠方の海外旅行が増えるのでは。もう一度巻き返しをはかり、賛同企業・団体の優良事例を積極的にウェブサイトなどで発信したい」と話した。

 さらに、田端氏は国際関係業務について、以前は他国との観光交流事業は国際観光課のみで担当していたが、就任直後に旅行振興担当の参事官を置き、同課と連携してアウトバウンド促進に向けた取組を強化していることを説明。例として9月に開催された「日・イスラエル直行便実現に向けたイスラエル訪問ミッション」に審議官が出席し、2国間で直行チャーター便の実現を検討することで合意したことを紹介した。なお、一部報道では、両政府は19年中に成田/テルアビブ間でチャーター便を運航したい考えという。このほか、田端氏は来年1月にはインドと相互交流促進に向けた協議を実施する予定を明らかにした。

JOTC、19年度は中近東アフリカでも「秘境20選」

 会議ではJOTCの19年度の活動計画案を発表した。部会別では、欧州部会で「食」をテーマにした20選または30選を設定。中近東アフリカ部会で「厳選秘境20選(仮称)」を選定し、商品化に取り組む。北中南米部会は、今年発表した「アメリカ大陸 記憶に刻まれる風景30選」の商品化を促進する。オセアニア大洋州部会は、オセアニアで周遊旅行の拡大、大洋州でデスティネーションの深掘りに取り組む。アジア部会は周遊旅行の強化と新規デスティネーションの開発を、東アジア部会は旅行者の主要都市への一極集中の緩和と収益力の高い商品の開発などをめざす。

 BtoB向けの取組としては、大使館や観光局向けに日本の海外旅行市場動向に関する情報発信を強化。また、旅行会社がパンフレットなどに利用できるフォトライブラリーの充実をめざす。「プランナーのためのセミナー」と各地での研修旅行については、さらに積極的に実施する予定。

 BtoCでは、20歳のパスポートを持たない全国の若者200名に対し、ほぼ無料で東アジア、東南アジアなど10ヶ国・地域での海外体験ツアーを提供する「20歳初めての海外体験プロジェクト」を実施する計画(関連記事)。このほか、「海外旅フェスタ」「海外教養講座」、教職員向けの海外教育旅行セミナーなどは回数を増やす。オンラインを活動したプロモーションについては、女性向け旅行情報サイト「女子旅プレス」を活用してPR活動を強化する。