20歳・200名に初の海外旅行を無料提供へ、官民一体で若者の海旅促進

權田氏  日本旅行業協会(JATA)のアウトバウンド促進協議会(JOTC)は11月13日に開催した臨時全体会議で、19年度以降の新たな取組として、「20歳初めての海外体験プロジェクト」の実施計画を発表した。20歳のパスポートを持たない全国の若者200名に対し、空港使用料などを除きほぼ無料で東アジア、東南アジアなど10ヶ国・地域での海外体験ツアーを提供するもの。観光庁が主体となり、外務省、文部科学省とJATA、観光局、航空会社などによる20名程度のプロジェクト実行委員会を12月末までに立ち上げ、来年11月以降の実施をめざして関係各社に協力を求めていく。

 若者の旅行振興については、政府が「明日の日本を支える観光ビジョン」で「若者のアウトバウンド活性化」を掲げており、昨年12月には観光庁が「若者のアウトバウンド活性化に関する検討会」を設置し今年の7月に最終とりまとめを発表しているところ。取りまとめでは官民連携での取り組みの必要性が示されていた。

 JATA海外旅行推進部部長の權田昌一氏は、「若者の海外旅行離れに対する危機感は業界全体で共有している」と強調。「若者の出国者数は回復の向きもあるが、F1層を中心したヘビーリピーターが旅行回数を増やしたということではないか。若者のパスポートの取得率は1995年の9.5%から、17年は6.9%まで落ち込んでいる」と説明し、「若者の約2割を占めるヘビーリピーターではなく、海外に行ったことがない層に海外に行ってもらいたい」と語った。

 具体的には若者の6割を占めるという、治安や言葉、食事などに漠然とした不安を感じるが「機会があれば行ってみたい」と考えている層にアプローチし、海外での体験を通し、出国者数の増加、ひいては留学、海外就労などにつなげたい考え。初年度の19年度は、10年パスポートが取得可能で、休みもある程度取りやすい20歳をターゲットに設定。權田氏は詳細は未定としながらも、プロジェクトは数年間続けたい考えを示した。

 ツアーは旅行会社10社が無料の受注型企画旅行として実施する予定で、航空券は航空会社、地上素材と体験プログラムは各国政府や観光局、パスポート取得代金は空港会社からそれぞれ無料で提供してもらう計画。JATAが窓口となり、各社・団体に協力を呼びかけはじめており、すでに複数の航空会社や観光局からは前向きな返事を得ているという。観光庁にはプロジェクトの告知や参加者の募集などで協力を求める。大学にはプロジェクトの効果測定に加え、ツアーによる欠席を公休扱いするよう要望。経団連に対し、就職活動の際、海外体験を評価するよう引き続き求めるなど、若者が参加しやすい環境づくりにも取り組む。

 日程は5日間で、羽田、成田、関空、中部発着で香港、マカオ、台湾、韓国、グアム、ベトナム、タイ、マレーシアなど空路で5、6時間程度のデスティネーションへの渡航を想定。現地では各地の視察に加え、若者との交流、在外公館の表敬訪問、日本学校の訪問などを実施する予定。

 来年3月から参加者の募集を開始する予定で、權田氏は「1万人くらい応募してほしい」と意欲を語った。募集要項は検討中だが、事前研修や終了後のレポート、ソーシャルメディアでのツアーに関する情報発信などを条件にする予定。6月に参加者を決定し、7月の事前研修を得て、10月に大阪で開催する「ツーリズムEXPOジャパン2019」内で結団式を開催し、11月から12月にかけて、20名・10団体が現地を訪問する。20年3月には報告会を実施する。