一休、引き続き「富裕層」特化-メタサーチ活用、会員プログラムも

  • 2018年10月17日

榊氏  一休が10月17日に開催した「一休メディアカンファレンス2018」で、同社代表取締役社長の榊淳氏は本誌のインタビューに応え、主力の宿泊事業について「OTAとして国内1位の取扱規模をめざすのではなく、我々がターゲットとする、年に100万円以上一休で消費する『富裕層』にとって最も良いサービスをめざしたい」と語り、富裕層に特化したサービスを継続する方針を示した。

 一休は宿泊事業において、日本人富裕層の国内旅行を主要ターゲットに、ウェブサイト「一休.com」で国内2000軒、ビジネス客向けの「一休.comビジネス」とテーマに特化した「一休.comキラリト」で3000軒、計5000軒の宿泊施設を提供。「一休.com」のうち100施設は「一休Plus+」として、国内OTAでは同社でしか扱わない旅館やホテルの客室を提供している。

 10年度の宿泊事業における取扱高は約300億円。17年にヤフーが一休を買収した後の取扱高は非公開だが、17年度は10年度の約3倍に増えており、特に一休で年間40万円以上利用する層が急激に伸長。共働きの夫婦で海外旅行に行きにくい旅行者など、年収の高い層以外も増加している。榊氏によると、今後も成長は継続する見通しという。

 競合については、一休のユーザーが併用しているサービスを元に、楽天トラベル、じゃらん、JTBの3社を挙げるとともに、「我々は高級な宿泊施設に特化しており、富裕層がノイズだと感じる普通の宿泊施設は表示していないので、富裕層が一番快適に予約できる」と自信を示した。海外OTAについては「彼らの主なターゲットは訪日客。日本人が国内宿泊で海外OTAを利用するケースはまだ少ないため、競合としては見ていない」と話した。なお、一休では訪日客向けのサービスは提供しておらず、当面は予定はないという。

 このほか、同氏はYahoo!トラベルに加え、TrivagoやTripAdvisorなどのメタサーチを活用し、新規ユーザーの取り込みをはかっていることを紹介。メタサーチから流入した旅行者のうち、宿泊単価などから一休のユーザーになりやすい特定の条件を設定し、条件を満たした旅行者に再利用を促すクーポンや特別プランをメールで知らせるなどの対応により、ロイヤルカスタマー化をめざしているという。

 なお、同社は宿泊事業以外にもバケーションレンタル事業、レストラン事業、スパ事業を展開しているところ。旅行中のアクティビティなど、今後事業をさらに広げる可能性については、「我々のお客様は宿につくことがゴールなので、アクティビティについては検討していない」と説明。「現業が伸び調子なので、現業にリソースを費やしたい」と話した。

会員プログラムが富裕層に評価

栗山氏  メディアカンファレンスは、同社の執行役員で宿泊事業本部長の栗山悟氏が、会員プログラムを強化していることを説明。会員プログラムでは年間の利用額ごとにランクを設けているが、「高級な宿泊施設に泊まるお客様は自分だけの特別な体験を求めている」傾向にあることから、最高級ランクの年間30万円以上利用する「ダイヤモンド会員」向けの特典として、レイトチェックアウト、客室のアップグレード、ウェルカムギフトの贈呈などのサービスを提供していることを紹介。こうしたサービスが富裕層に評価されたことで、市場におけるシェアを伸ばしているという。

 なお、一休ではBooking.comと提携し、海外の宿泊予約も取り扱っているところ。Booking.comが扱う宿泊施設のうち、日本人が海外旅行でよく訪れるデスティネーションの富裕層向け施設を選んで掲載しているが、取扱規模はまだ小さいという。

 このほか、メディアカンファレンスではバケーションレンタル事業、レストラン事業、スパ事業についても担当者が説明。このうちバケーションレンタル事業では一棟貸しの別荘、レジデンス、ヴィラ、町家、古民家などを扱っており、600施設を提供しているところ。栗山氏によると、まだ取扱規模はそれほど大きくなく、今後は一休.comのユーザーによる利用増をめざすとともに、法人向けにオフサイトミーティングなどでの利用を呼びかけていく考えを示した。