富裕層のニーズが多様化、誘致に向けネットワークを活用-ツーリズムEXPO

価値ある体験を求める富裕層が増加
多様なニーズへの対応で地域全体が協力を

シンポジウムの様子  ツーリズムEXPOジャパン2018では、「ラグジュアリー・トラベルの訪日促進に向けて」をテーマに「ラグジュアリー・トラベル・マーケット・シンポジウム」が初めて開催された。日本政府観光局(JNTO)やDMO、富裕層向け旅行会社、ホテルのコンシェルジュが参加し、消費額が大きい富裕層の傾向や、訪日につなげるための解決すべき課題などを議論した、シンポジウムの様子を紹介する。


<基調講演>
日本政府観光局(JNTO)理事 柏木隆久氏
<パネルディスカッション>
モデレーター:
JNTO理事 柏木隆久氏
パネリスト:
クリル・プリヴェ創業者&CEO 高野雅臣氏
せとうち観光推進機構外部人材アドバイザー、Intheory代表取締役 村木智裕氏
グランドハイアット東京 チーフコンシェルジュ、レ・クレドールジャパン バイスプレジデント 今泉愛子氏


訪日富裕層へのアプローチを強化
タイプに合ったアピールを

柏木氏  シンポジウムではまず、JNTO理事の柏木隆久氏が訪日富裕層の動向に関する基調講演を実施した。同氏は政府が掲げる2020年の訪日外国人旅行者数4000万人、消費額8兆円の目標達成に向け、富裕層をターゲットにプロモーションを展開していることを説明。富裕層旅行市場を「費用の際限なく満足度の高さを追求した高消費額旅行を実施する市場」と定義し、JNTOとして「100万円以上旅行先で消費する人」をターゲットにしていることを語った。

 加えて、先ごろ実施した英国、ドイツ、フランス、オーストラリア、米国の富裕層旅行の実態や消費行動などの調査を紹介。5ヶ国の旅行者数は年間3億4100万人で、このうち1.0%の340万人が富裕層。5ヶ国の旅行者の消費額は44.2兆円で、このうち富裕層は13.5%の6.0兆円を消費している。柏木氏は「市場規模はそこそこのボリュームがあるので、取り組む価値がある」と意義を強調した。

 さらに、同氏は富裕層の志向や旅行形態を分類。志向については50代から60代が中心の「Classic Luxury」と、20代から30代のミレニアル層が中心で、近年増加傾向にある「Modern Luxury」の2種類があるといい、Classic Luxuryは「最良のサービス」「プライバシー」「高い快適性」「エクスクルーシブ」などが、Modern Luxuryは「本物かつ一生に一度の体験」「エコツーリズム」などがキーワードになるという。旅行形態については、旅行の全項目で高額を消費する「All Luxury」、自ら情報収集し、優先度の高いものに重点的に投資し、時にはエコノミークラスの航空券なども利用する「Selective Luxury」があることを語った。

 このほか、同氏は富裕層向けの観光コンテンツのポイントとして、日本ならではの価値があり、プロフェッショナルが融通のきく体制・対応でサービスを提供し、高価で世界的な格付けがあることを挙げた。今後は10月以降に各地域のDMOから訪日向けの観光コンテンツを幅広く募り、応募のなかから富裕層向けのコンテンツを選定。今年度中に富裕層向けのウェブサイトを立ち上げ、BtoC向けのプロモーションを強化するという。