添乗員の「働き方改革」、ツアーに与える影響は?-TCSA事務局長に聞く
「時間外の上限規制」は添乗員不足に拍車か
若手添乗員の増加に向け業界全体で取り組みを
日本添乗サービス協会(TCSA)は4月1日付で、事務局長に元日本旅行サービス常務取締役の横尾治彦氏を任命した。横尾氏は日本旅行で34年間、法人営業や経営企画、コンプライアンスなどの業務に携わった後、日本旅行サービスで7年に渡り店舗の運営などに関わってきた。「添乗員の処遇を改善しなければ添乗員が慢性的に不足し、添乗員付きツアー自体が減少することになりかねない」と懸念を語る同氏に、旅行会社出身者から見た添乗業界の現状と、今後取り組むべき課題などについて話を聞いた。
-事務局長に就任されて5ヶ月が経過しました
横尾治彦氏(敬称略) TCSAに入って特に驚いたのは、添乗員の年収の低さ。正確な平均年収を調査することは難しいが、おそらくベテランクラスでも年収は500万円未満で、それ以外は200万円前後の添乗員が多いと会員などからは聞いている。添乗業務だけでは生活できないため、副業をしている人が多い。年収の低さから若手の添乗員が不足するとともに、一定の収入があるベテランが残ることで添乗員が高齢化し、添乗業界の課題となっている。
添乗員にツアーを任せれば、旅行会社の社員は通常の業務に割ける時間が増える。質の高い添乗員はお客様のリピーター化に繋がるような仕事をしてくれる。特に欧州や北中南米、アフリカなどの遠距離のデスティネーションの周遊ツアーは、安心・安全の観点からも添乗員が必要だと思う。添乗員不足は旅行会社にとってもデメリットだろう。今後、旅行会社の皆様と協力し課題解決に向けて取り組んでいきたい。
-添乗員の働き方の現状を教えてください
横尾 TCSAには約40社の添乗員派遣会社が正会員として所属しており、各社の所属添乗員は合計約9500名。ほとんどは添乗業務ごとに派遣会社と契約をその都度結ぶ「登録型派遣」の添乗員だ。旅行者からの評価が高いベテラン添乗員であれば旅行会社からのニーズが高く、年間を通じてある程度の仕事を得ることができるが、そうした添乗員はごく一部。多くの添乗員は繁忙期と閑散期の仕事量に差があるのが実態だ。
最近は添乗員と期間の定めのない契約を結ぶ「無期雇用派遣」を採用している会社もあるが、添乗員の場合は他業種と異なり仕事がない期間の収入は保証されないので、結局は副業などで稼ぐしかない。