「一生に一度」の絶景、世界が憧れるスイス・ユングフラウ
ユングフラウ鉄道の一大プロジェクトもスタート
紅葉シーズンのグリンデルワルトの訴求にも意欲
山岳観光の拠点となるグリンデルワルトへは、インターラーケン・オストから「ベルナー・オーバーラント鉄道」でアクセスする。黄色と青のラインが印象的な近代的な列車で、運行本数も多い。グリンデルワルト駅から伸びるストリートにはホテル、レストラン、カフェ、アウトドアショップなどが並び、日本のモンベルもショップを構えている。
本誌とのインタビューに応えたグリンデルワルト観光局マネージングデイレクターのブルーノ・ハウスワース氏によると、ホテルの宿泊統計ベースで観光客のうちアジアからは全体の30%、そのうち日本人は6%から7%。「中国本土や台湾からの観光客が増加しているが、日本市場は安定している」という。日本をはじめアジア市場は春から夏に集中し、冬季は国内およびヨーロッパからはスノーアクティビティを求める旅行者が多いようだ。
また、ハウスワース氏は日本市場について、「グリンデルワルトが唯一姉妹都市を結んでいるのが長野県の松本市。それだけ、日本との友好関係を大切にしている。決して日本市場から撤退はしない」と今後も日本人旅行者の誘致に力を入れていく考えを示す。また、今後のプロモーションについては、「夏とは異なる表情を見せる9月中旬から10月中旬にかけての紅葉シーズンは、日本人には受け入れられるのではないか。ホテルの値段も夏期に比べると下がるので期待できると思う」と話し、需要の平準化にも取り組み姿勢を示した。
ユングフラウ鉄道の一大プロジェクト、利便性さらに向上
ユングフラウ鉄道グループでは、総額4億7,000万スイスフラン(約517億円)を投じたVバーン・プロジェクトを今年夏からスタートする。同社CEOのウルス・ケスラー氏は「新たな開発によって、地元の観光産業やホテルなどともに、世界最高水準の観光デスティネーションをめざす」と説明。新プロジェクトを通じて、増加する世界からの観光客に対応するとともに、交通の利便性をさらに高めていく方針を示した。
Vバーンのなかで最大となるプロジェクトは、グリンデルワルト・グルントの再開発。グリンデルワルト駅からユングフラウヨッホに向かう経由駅だが、新たにインターラーケン・オストからのベルナー・オーバーラント鉄道と接続するRothenegg駅を建設。ここには車やバスのパーキングエリアもあることから、乗り換えのターミナル機能を充実させ、ショッピング施設も新たに設ける。
また、新設する駅からはユングフラウ鉄道の中間駅アイガーグレッチャーまで、新たに10席のゴンドラによるケーブルウェイ「アイガーエクスプレス」も設置。これに伴い、アイガーグレッチャー駅を改修するほか、アイガーグレッチャー/ユングフラウヨッホ間にシャトルトレインを運行する予定。完成すれば、インターラーケン・オストからユングフラウヨッホまでの所要時間は現在よりも47分短縮され、1時間半でアクセスすることが可能になるという。さらに、グルントにはバスターミナルも建設し、グリンデルワルトのフィルストハーン出発駅までの直行バスを運行する。すべてのプロジェクトが完了するのは2020年12月の予定だ。
ユングフラウ鉄道グループは、今年8月に日本でこの新プロジェクトを説明する機会を設ける。ケスラー氏は、「90年代後半は経済状況によって日本人観光客は減少したが、現在は毎年安定した実績を残している」と評価。アジア他国からの旅行者が増加しているが、「現地では日本人旅行者の礼儀正し振る舞いは好意的に受け取られており、いつでも歓迎している」と日本市場にメッセージを送った。
取材:山田友樹