民泊新法施行も届出は2700件、簡易宿所登録増-仲介業者に期待の声
住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月15日に施行された。観光庁によると、6月8日時点で民泊ホストの「住宅宿泊事業者」の届出件数は2707件で、このうち1134件の届出を受理。届出件数が最も多かったのは東京23区で823件だった。宿泊者と民泊ホストを仲介する「住宅宿泊仲介業者」の申請は46件で登録済は10件、家主不在型の民泊物件を管理する「住宅宿泊管理事業者」の申請は817件で登録済は632件。地方自治体の事務所などに、民泊ホストなどからの相談が多く寄せられていることから、今後も登録が増える見通しという。
同庁によると、住宅宿泊事業者の届出件数が伸び悩む一方、旅館業法の簡易宿所や特区民泊の件数が増加傾向にあり、例えば17年度の京都市における簡易宿所の営業許可施設数は前年比53.4%増の2291件。大阪市の特区民泊の認定施設と居室の数は、昨年4月の48施設・95居室から今年4月には651施設・1899居室まで増加している。
国土交通省によれば、国土交通大臣の石井啓一氏は同日の閣議後の会見で「新法に基づく民泊、簡易宿所、特区民泊などがあるので、それぞれに応じてお選びいただきたい」とコメント。新法について「急速に拡大する民泊サービスで安全面・衛生面の確保がなされていないなどの問題への対応や、訪日外国人旅行者が急増するなか、多様化する宿泊ニーズへの対応をはかるため制定した」と改めて意義を強調したという。
新法では年間営業日数の上限が180日に規制されているところ。同日に宿泊施設活性化機構、全国民泊同業組合連合会、全国賃貸管理ビジネス協会の3団体からなる「地方創生宿泊施設推進実行委員会」が主催した「住宅宿泊事業法施行を祝う会」では、観光産業課長の鈴木貴典氏が登壇し、新法では用途規制で簡易宿所が営業できない住宅地や、賃貸住宅などで民泊サービスをおこなえる点をメリットとして説明。今後の規制緩和の可能性についても言及し、「実態に即してうまく制度が活用できるような方法を関係省庁とともに考えていきたい」と話した。
一方、簡易宿所や特区民泊については、365日通年で営業でき、事業として独立性が高いことをアピールし、目的に合わせて法制度を選択するよう呼びかけた。
▽新法施行で記念イベント、石破元大臣「今後が大変」
「住宅宿泊事業法施行を祝う会」では、冒頭に元地方創生大臣で衆議院議員の石破茂氏が挨拶。「登録者が思ったよりも増えておらず、これから先が大変。行政としてしっかりKPIを設定し、PDCAサイクルを回したい」と意欲を語った。観光庁次長の水嶋智氏は「新法は旅行者が安心して利用できる民泊を普及拡大するためのもので、施行して終わりではない」と強調。「円滑な届出を促進し、違法民泊から合法民泊の転換をはかりたい」と話した。
会合では鈴木氏のほか、全国賃貸管理ビジネス協会会長の高橋誠一氏、厚生労働省生活衛生課長の竹林経治氏、参議院議員の阿達雅志氏、全国民泊同業組合連合会会長の沼田美穂氏がシンポジウムを開催。竹林氏は違法民泊について言及し、「我々のミッションは違法民泊対策。新法が報道で取り上げたことで、『合法でやろう』という意識が浸透した」と新法の効果を主張した。今後は地方自治体や警察庁などと協力して対策を実施。「地域に愛される民泊もあるので、観光庁とともに事例を紹介し、健全な民泊サービスの提供に取り組みたい」と話した。
阿達氏は民泊新法に対し、地方自治体が条例で規制を設けていることに言及。「上乗せ規制は法律制定の際にも問題になった」としながらも、各地域で違法民泊での犯罪や利用者によるゴミ問題などが起こり、民泊サービスに不安を覚える住民が多いことを指摘。「プロフェッショナルである住宅宿泊管理事業者や仲介業者が地域での評判を意識して民泊サービスに取り組み、違法民泊を広がらないように情報交換していただきたい」と要望した。
なお、住宅宿泊仲介業者については、5月に国内外の大手6社が業界団体の設立をめざして準備会合を開催したところ。百戦錬磨代表取締役社長の上山康博氏は本誌の取材に応え、団体の設立時期について「新法施行後の申請などが一段落してから」とコメント。仲介業者各社が違法業者を仲介サイトから排除した後に団体を立ち上げる考えを説明し「信頼性を担保した上で、民泊サービスの適正化をはかるための団体にしたい」と語った。