求人情報

海外医療通信 2018年3月号【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

  • 2018年3月27日

※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

【リンク】
東京医科大学病院・渡航者医療センター

=====================================================

・海外感染症流行情報 2018年3月号

(1)ブラジルで黄熱流行が続く

ブラジル南東部で発生している黄熱の流行は3月も続いています。2018年2月20日から3月13日までの患者数は375人で、外国人旅行者の患者数も11人になりました(米州保健機関 2018-3-20)。患者発生の多い地域はミナス・ジェイライス州、サンパウロ州、リオデジャネイロ州で、外国人旅行者の感染はリオデジャネイロ近郊の観光地Ilha Grande島で多くみられます(WHO 2018-3-9)。これらの外国人旅行者は黄熱ワクチンの接種を受けていませんでした。患者の発生数は次第に減少している模様ですが、サルの集団感染がブラジル南部で多発しており、今後、パラグアイやアルゼンチンにも流行が拡大する可能性があります。

米国CDCは今回のブラジルでの黄熱流行を、3段階の流行危険度のうちレベル2(高度の注意が必要)に分類し、ブラジルへの渡航者にワクチン接種を呼びかけています(米国CDC 2018-3-15)。黄熱ワクチンは1回接種で生涯有効とされていますが、米国CDCはブラジルへの渡航者に関して、接種後10年が経過していれば、追加接種を受けるよう勧告しています。

(2)フィリピンで麻疹の患者数が増加

今年1月から2月初旬までにフィリピンで麻疹の患者が800人以上確認されました(英国 FitForTravel 2018-3-3)。これは昨年の3倍の数になります。患者発生はミンダナオ島のZamboangaやDavaoで多くみられています。日本国内では2014年に、フィリピンからの輸入症例などを起点とする麻疹の国内流行が発生しています。現地に滞在する渡航者は、ワクチン接種を受けるなどして、日本に持ち込まないように注意する必要があります。

(3)東南アジアでのデング熱流行状況

今年は東南アジアでのデング熱患者数が昨年よりも少ない数で推移しています。マレーシアやシンガポールは雨季になっていますが、デング熱の患者発生は低いレベルです。今後、タイやベトナムなどでも雨季が始まるため、本格的な流行はこれからとなります。

(4)西アフリカでラッサ熱が流行

西アフリカでラッサ熱の流行が拡大しています。とくにナイジェリアで患者数が多く、今年1月から3月中旬までに確定患者は300人以上にのぼり、このうち95人が死亡しました(WHO 2018-3-23)。流行はベニン、ガーナ、ギニア、リベリアなどでも報告されています。ラッサ熱はウイルスによっておこる出血熱で、ネズミの尿に排泄される病原体に接触して感染します。西アフリカでは毎年1月~6月に流行がみられていますが、今年は媒介するネズミの数が増加したため、大規模な流行になった模様です。

(5)南アフリカでマラリア流行地域が拡大

南アフリカ共和国ではマラリア流行地域がモザンビーク国境付近に限局していましたが、昨年から北部のLimpopoでも患者の発生がみられています。今年3月には英国人旅行者2名が、この地域にある自然公園を訪問した後に、熱帯熱マラリアを発病しました。(英国NaTHNaC 2018-3-16)。Limpopoは首都プレトリアの北方で、旅行者が訪問しやすい場所にあります。英国保健当局は同地域に滞在する旅行者にマラリアの予防内服を推奨しています。

(6)ヨーロッパで今年も麻疹が流行

昨年に引き続き、今年もヨーロッパ各地で麻疹の流行が発生しています(ヨーロッパCDC 2018-3-21)。今年はギリシャで患者数が多く、3月中旬までに南部を中心に1131人の患者が報告されました。フランスでもボルドーのある西部地域を中心に400人以上の患者が報告されています。日本では昨年1年間の麻疹患者が189人であり、ヨーロッパ各地での患者数の多さがわかります。

 

・日本国内での輸入感染症の発生状況(2018年2月12日~2018年3月11日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査を参考に作成しました。出典:https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2018.html

(1)経口感染症:輸入例としては細菌性赤痢14例、腸管出血性大腸菌感染症7例、腸チフス・パラチフス5例、アメーバ赤痢4例、A型肝炎2例、ジアルジア症2例、クリプトスポリジウム1例が報告されています。細菌性赤痢は前月(14例)と同様に例年よりも増加しており、フィリピン(4例)と南米(3例)での感染が多くなっています。

(2)蚊が媒介する感染症:デング熱は9例で、感染国はフィリピンが4例で最多でした。今年の累積患者数は20例で、2017年同期(31例)、2016年同期(53例)に比べて大幅に減少しています。マラリアは5例で、4例がアフリカでの感染例でした。

(3)その他:麻疹の輸入例が2例報告されており、タイとインドでの感染でした。

 

・今月の海外医療トピックス

(1)SDGs:Sustainable Development Goalsとは?

4月24-30日はWHOの世界予防接種週間で今年のテーマは“Protect Together, #Vaccines Work"です。そのサイトでは様々な情報が提供されていますが、予防接種がこれまで以上に重要な理由として、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するためには、予防接種へのアクセスを拡大することが不可欠であると記載されています。最近、新聞紙上などで散見されるようになったSDGsという単語ですが、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2016年から2030年までの国際目標です。日本国内で予防接種へのアクセスを拡大するためにも、定期接種としての小児科やかかりつけ医に加え、任意接種機関としてトラベルクリニックの役割がSDGs達成に重要となってくると思われます。兼任講師 古賀才博

http://www.who.int/campaigns/immunization-week/2018/en/ (WHOのサイト)

(2)ジカウイルス感染による新生児の障害発生率は7%

南米のフランス領ギアナなどで2016年に行われた調査によれば、546人の妊婦がジカウイルスに感染し、このうち39人(7%)が出産した新生児に神経系や眼の障害が確認されました(New England Journal of Medicine 2018-3-14)。この障害発生率は昨年、米国CDCが発表したデータとほぼ同じ数値です。妊婦の感染が妊娠初期の場合、障害発生率は13%と最も高くなりますが、妊娠中期や後期に感染したケースでも障害が発生しています。


・渡航者医療センターからのお知らせ

当センターの企業相談窓口(有料)

当センターでは企業の健康管理や人事労務担当者を対象にした、海外勤務者の健康管理に関する相談窓口(有料)を開設しています。企業の健康管理体制の構築や、メンタルヘルス事例の相談などに応じます。年間契約をいただければ、契約期間中は何回でも相談をすることができます。相談には専門の医師が対応いたします。詳細は下記のHPをご参照ください。

http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/tokou/consultation.html