週間ランキング、てるみくらぶ再注目の1週間、顧客満足度調査も

[総評] 今週の1位は、てるみくらぶと親会社のてるみくらぶホールディングス、関連会社の自由自在が月曜日に開催した債権者集会の様子をお伝えした記事です。3月末の破綻から半年以上が経過し世間の口の端にのぼる機会も減ってきていたように思いますが、いざ第1回の債権者集会が開かれると一般メディアを含めて大変な注目度合いです。

 ましてや翌々日には山田千賀子社長と元経理担当責任者が逮捕されるという、まさに遺憾としかいいようのない事態となりその注目は増すばかり。粉飾決算をしながら3000万円の役員報酬を得ていたとか、配当金として3億円超を社外に流出させていたとか、醜悪な情報がマグマのようにどろどろと吹き出しもはや目も当てられない状況です。

 ひとつ分かりにくいのは、今回の逮捕容疑が銀行から2億円の融資を騙しとった疑いであって、消費者に対する詐欺行為ではない点です。消費者に対しても、旅行サービスを提供できる状況ではないと知りながら募集をし旅行代金を徴収すれば詐欺にあたるはずですが、今回その点は取り上げられていません。消費者については人数も多く、さらに誰の罪を問うのかも複雑になりますので、もしかすると警視庁の判断はそうした点も考慮されているのかもしれません。

 個人的には、山田社長の「嘘を重ねたが詐欺ではない」という趣旨の発言は信じられず、東京商工リサーチ(TSR)が発表した債権者集会の質疑応答の概要でも、「破産を予見していたのかどうか」という肝心の部分は入念に練習したかのようにきれいに回答を避けており、申し訳ないと涙ながらに話されたという言葉も空虚にしか受け入れられません。

 一方で、山田社長のもとで職務を果たされていた役員など経営幹部や管理職についても気になります。実際にお客様に対して無理な営業や集金をし、あるいは取引先への支払い遅延などを実行していた方々がいるわけですが、逮捕されたお二方以外は誰も内情を知らなかったなどということがあるはずもなく、罪悪感を持たれていた方も一定程度いるはずです。

 そうした方々には、以前も書きましたが、不運にもいつかまた同じような状況に直面された際には、是非とも勇気を持って行動を起こしていただきたいと思います。来年4月には観光庁の通報窓口もできますし、あるいはメディアに対して匿名で情報提供をされるのも一つの手です。

 逆に、もしも知っていて罪悪感を覚えなかった、あるいは開き直っていた人もいるとすれば、逮捕されないにしてもいつか必ず報いを受けることになるでしょう。いずれにせよ、もう二度とあのようなことは起きてほしくないと切に願うばかりです。

 なお、2位はサービス産業生産性協議会による恒例の顧客満足度調査の結果についての記事でした。毎回人気のある記事で、てるみくらぶさえなければ順当に1位になっていたはずです。

 関係者にお聞きしたところでは、てるみくらぶのツアーは食事内容も充実しているなど満足度は高かったそうです。仕入れ値よりも売値の方が安く、さらに期待値も大手よりも高くないのですから当たり前といえば当たり前で、消費者にとってはいつか自らの身を傷付けるロシアンルーレットのようなものだったといえます。

 旅行業界関係者であれば、これがこの価格なはずがない、ということが分かっていたわけですが、消費者はそれを知るすべがありません。しかし、逆にそれを伝えることができれば、正しい価格でそれにふさわしいサービスを提供できるようになる可能性があるともいえます。

 折しもヤマト運輸が約30年ぶりに値上げをしましたが、感覚的に世間は「仕方ない」という反応が大半です。

 旅行業界も、従業員のやる気にあぐらをかく薄利のビジネスモデルから、価値あるサービスを自信を持って提供ししかるべき対価を頂戴していくモデルに変革していく必要があるわけですが、てるみくらぶの一件はそのための契機として活かしていくべきではないかと考えています。(松本)

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(2017年11月05日0時~11月11日18時)
第1位
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