ユネスコ（国際連合教育科学文化機関）の世界遺産委員会はこのほど、ポーランドのクラクフで開催中の第41回会合において、新たに英国の湖水地方など21件の世界遺産登録を決定した。内訳は文化遺産18件、自然遺産3件、複合遺産0件。今回の登録により世界遺産の累計件数は、文化遺産832件、自然遺産206件、複合遺産35件の計1073件となった。アンゴラとエリトリアが初めて世界遺産登録を果たしたことにより、世界遺産を持つ国の数は167ヶ国に増加した。

　日本については「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の登録を決定。諮問機関のICOMOS（国際記念物遺跡会議）は当初、8つの資産で構成する同案件について「沖ノ島とその周辺の小屋島、御門柱、天狗岩の４つのみを世界遺産に登録すべき」と提言していたが、審議では宗像大社沖津宮遥拝所、宗像大社中津宮、宗像大社辺津宮、新原・奴山古墳群も含めた8つの構成資産のすべてを含む形で登録が決定した。今回の登録により日本の世界遺産の件数は21件となった。

　環境破壊などによって、世界遺産としての価値が危機的な状況にさらされている「危機遺産」には、高層建築により景観が破壊される恐れがあると判断されたオーストリアの「ウィーン歴史地区」を指定。パレスチナのヘブロン旧市街については、文化遺産登録と同時に危機遺産に登録した。一方、エチオピアの「シミエン国立公園」などは危機遺産リストから除外した。第41回の登録決定案件は以下の通り。

▽世界遺産委員会、第41回会合における登録決定案件
【新規登録】
・文化遺産
「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群（日本）
Aphrodisias（トルコ）
Asmara: a Modernist City of Africa（エリトリア）
Assumption Cathedral and Monastery of the town-island of Sviyazhsk（ロシア）
Caves and Ice Age Art in the Swabian Jura（ドイツ）
Hebron／Al-Khalil Old Town（パレスチナ）
Historic City of Ahmadabad（インド）
Historic City of Yazd（イラン）
Kujataa Greenland: Norse and Inuit Farming at the Edge of the Ice Cap（グリーンランド）
Kulangsu: a Historic International Settlement（中国）
Mbanza Kongo, Vestiges of the Capital of the former Kingdom of Kongo（アンゴラ）
Taputapuātea（仏領ポリネシア）
Tarnowskie Góry Lead-Silver-Zinc Mine and its Underground Water Management System（ポーランド）
Temple Zone of Sambor Prei Kuk, Archaeological Site of Ancient Ishanapura （カンボジア）
The English Lake District（英国）
Valongo Wharf Archaeological Site（ブラジル）
Venetian Works of Defence between 15th and 17th centuries: Stato da Terra - western Stato da Mar（クロアチア、イタリア、モンテネグロ）
ǂKhomani Cultural Landscape（南アフリカ共和国）

・自然遺産
Landscapes of Dauria（モンゴル、ロシア）
Los Alerces National Park（アルゼンチン）
Qinghai Hoh Xil（中国）

【拡張・縮小登録】
・文化遺産
Bauhaus and its Sites in Weimar, Dessau and Bernau（ドイツ）
Gelati Monastery（ジョージア）
Strasbourg: from Grande-île to Neustadt, a European urban scene（フランス）

・自然遺産
Primeval Beech Forests of the Carpathians and Other Regions of Europe（アルバニア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、ドイツ、イタリア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、ウクライナ）
W-Arly-Pendjari Complex（ベナン、ブルキナファソ、ニジェール）