週間ランキング、1位はLCC会議、HIS書類送検が2位
[総評] 今週の1位は、LCCに関する国際会議の記事でした。CAPA-Centre for Aviation(CAPA)という航空系シンクタンクによるイベントで日本では3回目の開催ですが、今回は関空が舞台となりました。関空はLCCの存在感が非常に大きくなっている空港で、LCC比率はすでに国内線で6割、国際線でも4割に達しているとのことです。
当欄では以前から、LCCの定義は突き詰めればそう名乗るかどうか、と書いてきました。FSCといえどもいわゆる「アンシラリーサービス(足元の広い席などの追加的サービス)」のバラ売りが当然となり、あるいは米系の「ベーシックエコノミー運賃」のようにサービスを制限することで安価な運賃を提供する動きもあります。
一方、LCCがビジネスクラスを持つのも普通のことのようになっていますし、出張需要に食指を動かしてセキュリティチェックの優先レーンを作る会社があったり、またサービスについても旅行会社のパッケージにはフルサービス、という会社もあり、あるいはBSPに加盟してGDSで販売したりする動きも多く、FSCとLCCの境界は曖昧になっています。
こうしたなかで個人的に思うのは、「フルサービス」の肩書を背負ってしまっているFSCの苦悩です。最近、FSCの国際線を2回ほど利用する機会があったのですが、たまたま2回とも機内設備が往路は新しく復路は古いという状況になりました。設備が新しいほど快適であることはいうまでもなく、往路で期待が高まったなかで復路でがっかりするという流れは、お客様の目線で非常に残念でしょう。
フルサービスだというならきちんと均質で高品質なサービスを提供してほしいと思うのが自然で、また満足というのは期待値を上げない方が得られやすいものであり、そういった意味で「FSC」と「LCC」という区別は、少なくともエコノミークラスの旅客にとってはLCCに有利なような気がします。実際のところ、もしかするとLCCの方が新しい機材を保有している傾向もあるかもしれず、そうだとするとそこも難しさの一つかもしれません。
また、2位はエイチ・アイ・エス(HIS)とHISの管理職2名が厚生労働省東京労働局から労働基準法違反で書類送検された記事でした。HISのハードワークはよく知られた話で、良くも悪くもそれが社風であったのではないかと思うのですが、果たして本当に変わることができるのか、というよりも一部かもしれませんが今までハードワークをある意味では楽しんできたであろう方々が変わろうという気になれるのかが気になります。
さらに、もっと気になるのはHIS以外の旅行会社における労務管理です。旅行会社の数は旅行業者代理業を含めて約1万社とされていますが、「HIS以外は労基法的に概ね“ホワイト”」ということは絶対にあり得ません。むしろ程度の差はあっても、時間を気にしないハードワークこそ事業成長のエンジンと考える向きの方が多いのではないかと思います。
今回の処分に見せしめの意図がどの程度あるのか分かりませんが、業界全体として求められるのは、これを対岸の火事などと考えずに環境を改善するためのきっかけとすることであるはずです。(松本)
▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2017年06月11日0時~06月16日14時)
第1位
◆関空でCAPAのLCCサミット開幕-「複雑化する市場」に対応(17/06/13)
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◆ユナイテッド、成田/SFO線にB773ER、「ポラリス」搭載(17/06/13)
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第10位
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