JATAなど、法改正で個人情報ガイドライン改定、周知徹底へ
日本旅行業協会(JATA)と全国旅行業協会(ANTA)はこのほど、都内で「JATA・ANTA個人情報取扱いガイドライン」の説明会を開催した。5月30日の改正個人情報保護法施行にあわせて、両会は4月1日付でガイドラインを改定したところで、変更点の周知徹底などが目的。新たなガイドラインでは、法改正により個人情報の対象範囲が拡大され、旅券や運転免許証の番号などの「個人識別符号」も含まれるようになったこと、第三者に提供する個人情報の取り扱いが厳格化されたことなどに注意すべきとしている。説明会には、JATA会員企業から120名、ANTA会員企業から24名が参加した。
冒頭で挨拶した、JATA法制委員会委員で日本旅行経営管理部法務室室長の森進哉氏は、「近年は事業者による個人情報の取扱いについて世間の目が厳しくなっており、事故などが発生した場合に企業に与える影響は小さくない」と指摘。その上で「説明会を通じて、個人情報の取扱いに関するリスクをいかに低減していくかを、十分に検討していただきたい」と参加者に呼びかけた。
個人情報保護法は2003年の公布後、05年に施行されたもの。今回の改正では個人情報の対象範囲拡大に加えて、これまでは対象外とされていた個人情報の取扱件数が5000件以下の事業者にも同法が適用されるようになる。また、身体の障害に関する情報など「要配慮個人情報」の取り扱いが新たに規定され、情報の取得・利用には本人の同意が必要になる。
そのほか、旧法では事前に本人に対し、第三者に個人情報を提供することなどを通知した上で、本人からの要望がない限りは情報提供が可能になる「オプトアウト方式」が取られていたが、改正後はルールを厳格化。同方式を利用する事業者には事前に政府の個人情報保護委員会へ届け出ることを義務化している。
説明会では、JATA法務・コンプライアンス室長の堀江眞一氏が、ガイドラインの主な変更点と、各社で対応しなければならない措置などについて解説。ツアー参加者などが免税店で購入した商品を空港で受け取る場合などを想定して店側に提供する個人情報については、旧ガイドラインのオプトアウト方式から、運送・宿泊施設などへの情報提供と同様に事前に利用者の同意を得るよう変更したことなどについて述べた。あわせて参加者には、取引条件説明書面として使用するパンフレットや申込書、受注型BtoB約款で使用する参加要領などの記載を修正するよう求めた。
その他に新たなガイドラインでは、手配業務において個人情報を第三者に提供する際は、その後の苦情などに備えて文書や通信記録を1年間保存することを明記。ただし、旅行業約款では苦情の申し出期間が「損害発生の翌日から起算して2年」と定められていることも考慮した上で、保存期間を決定するよう求めた。受注型BtoB約款に基づいた契約についても同様に、事業者との契約書面や参加要領を1年間保存することとした。
情報の取得に際して本人の同意が義務化された「要配慮個人情報」については、同意を取り付け、旅行会社側でその旨と同意を得た日時および担当者名を記録した書面を保管することを記載。個人情報が漏えいした場合の報告先には、観光庁などの登録行政庁のほか、個人情報保護委員会を新たに追加した。報告の方法については後日、個人情報保護委員会のウェブサイトに掲載される予定。堀江氏はあわせて、JATAとANTAにも報告を怠らないよう呼びかけた。
そのほか、保険会社や航空会社など運送機関の代理店についても、個人情報の取り扱い方法が変わる可能性があることから、代理店業務に関しては業務を委受託している企業の指示に従うこととした。