外務省診療所長、旅行者の感染症対策を推奨、保険加入も
海外邦人安全協会はこのほど、外務省診療所長の仲本光一氏を講師に招き「海外への赴任・渡航前に注意すべき医療事情と安全対策」と題した講演会を開催した。仲本氏は旅行業界などから参加した企業の危機管理担当者など約60名に対して、赴任前の情報収集や予防接種、現地での体調管理や保険加入などの重要性について説明。終了後の本誌の取材に対しては「多くが短期旅行者にも当てはまる」と述べ、旅行会社などの協力に期待した。
仲本氏は講演で、昨年に世界的な注目を集めたジカ熱など、主な感染症の発生状況について解説。このうち今年に入りマレーシアで日本人が死亡したデング熱については、東南アジアでの流行が「かなり危険な状態にある」と伝え、感染の疑いがある場合は受診など早期の対応が必要と説明した。
ジカ熱やデング熱などと同じく蚊が媒介するマラリアについては「初発症状が出てから5日以内に治療を開始しないと50%が死亡する」と述べ、「帰国後に間違った診断をされると命取りになる」と強調。一昨年に韓国で問題化した中東呼吸器症候群(MERS)についても「忘れ去られているが、中東ではコンスタントに発生している」と伝え、引き続き警戒を怠らないよう注意を促した。
そのほかには旅行者下痢症など、多くの旅行者が罹りやすい疾病への対策についても説明。重症疾患への対策としては海外旅行保険への加入を強く推奨し「掛け金が少ないと搬送先が限定されるが、4000万円あれば日本に搬送してもらえる可能性が出てくる」など具体的なアドバイスを示した。また、世界各国の医療事情をまとめて発信している外務省のウェブサイトについてもアピールし、「是非利用してほしい」と呼びかけた。
外務省の海外邦人援護統計によれば、日本人出国者数が1621万3789人に上った2015年の総援護人数は2万387人。死亡者数は533人で、そのうち傷病による死亡が約8割を占める。