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年間ランキング、1位は「澤田社長」、リスクとチャンスの1年に

[総評] 今回は、2016年の年間アクセスランキングトップ100です。1月から掲載した記事は合計5249本ですが、そのうちで最も多くお読みいただいたのは、10月28日に公開し号外で配信した「HISが経営体制再編、澤田氏が会長兼社長に、『攻めのガバナンス』へ」という記事でした。あの澤田秀雄氏が社長として戻って来られるということで、急いでお届けしたのがご評価いただけたようです。

 今回のランキングでは関連する記事をまとめており、1位の記事には速報に次いでお届けした詳報2本をまとめていますけれども、本来であればいずれも100位以内に入る注目度です。HIS自体が持つ旅行業界内のプレゼンスがそもそも大きくはありますが、やはり澤田氏のブランド力は巨大といっていいでしょう。

 HIS関連では今年、これ以外にも旅行会社の買収や国内外での支店開設、ホテルの開業などのほか、宇宙旅行への出資や電力販売など様々なニュースを掲載しており、積極的な事業展開が表れています。例えば支店展開では、沖縄専門店や海外での法人営業専門店など全体的な戦略も見えてきます。

 一方で、HISの話題性という意味では、東大生モデルが機内で横に座るという企画が開始当日に頓挫したこともありました。随分前のことのように思われるということは、過敏とも感じられた即日中止の対応も火消しとしては良かったのかもしれません。

 ただ、率直な感想としてはHISに限らずこの程度の炎上は物ともせずに貫いてほしかったですし、それができないなら最初から企画すべきではなかったと考えます。また、横に座るのが「イケメン」ならどうだったのか、であるとか、そもそもこれがダメなら世の中のあれこれはどうなのか、など色々と思うところの多いニュースでした。

 また、2016年は旅行業を取り巻くリスクが驚くほどはっきりと表出した1年であったように思います。2位の熊本地震や13位に入ったジェイティービー(JTB)の不正アクセス、16位のテロなどの記事が一例ですが、こうしたリスクは今年が終われば過ぎ去るというものではありません。

 例えば地震は、トラベルビジョンが取り上げただけでも今年のうちに福島や鳥取、台湾、ニュージーランド、イタリア、ミャンマーなどで発生しているほか、個人情報関連でも札幌通運や全日空(NH)のコールセンター、アシアナ航空(OZ)、ベトナム航空(VN)などが悪意のターゲットになったり情報を紛失したりしています。

 さらに、トランプ大統領や英国のEU離脱など従来は想像もできなかったようなことが平気で起きる時代でもあります。

 こうしたリスクすべてにあらかじめ対応しておくことは困難でしょう。しかし、逆にいえば環境が硬直的でなくなればなくなるほど、今までと異なるチャンスを手にできる可能性は高くなるはずです。

 ですから、環境の激変を恐れるよりも、例えばJATAサイバーリスク団体保険などのリスク回避策を採用して「保険をかけ」つつ、柔軟度の増した世の中でゼロベースでビジネスの機会をうかがうことができると捉えるべきなのではないでしょうか。

 旅行ビジネスの機会という意味では今年、2位の記事にあるように熊本地震に対する「ふっこう割」などの取り組みは、旅行による復興支援策として一定の成果を残せたと思われます。フランスやベルギー、トルコなどが直面している需要減は旅行会社の、あるいはもっと一般化すれば誰かの「困った」は誰かのビジネスチャンスでしょう。

 ちなみに、昨日聞いて驚いたのですが化粧品で有名な「DHC」の社名はもともと「大学翻訳センター」の頭文字だったそうで、化粧品は後から始められたそうです。調べてみると翻訳事業を現在でもされているだけでなく、ホテルやヘリコプターの事業などもされているようで、改めて自分が「こうでなければならない」「きっとこうに違いない」という固定観念に縛られていると痛感します。

 個人的な話ながら、今年はトラベルビジョンの代表取締役を拝命し、社長とは何かと随分悩んだ1年間でした。年も終わりに近づいてようやく見えてきたものもあり一方では相変わらず暗中模索の部分もありますが、一つ思うのは謙遜は必ずしも美徳ではないということです。

 もちろん経営者としての自己評価はまだまだですし、逆に今後成長した時にも図に乗るのはまっぴらですが、だからといって自分を卑下して見せたとしても相手も自分も何も得ることはないでしょう。2017年はこれまで以上に突き抜けてラディカルに思考し、自信を持って取り組んでいきたいと考えています。

 なお、トラベルビジョンではこのランキングをお届けする12月23日の朝刊をもって年内のメールニュース配信を終了し、2016年は1月5日の朝刊から再開します。ただし、重要なニュースなどは随時ウェブサイトを更新し、場合によって号外も配信する予定です。

 今年も1年間、ご愛読いただき誠にありがとうございました。来年もより一層皆様のお役に立てるよう努めてまいりますので、引き続きご愛顧賜りますようよろしくお願い申し上げます。どうぞ良いお年をお迎えくださいますよう心よりお祈りしております。(松本)


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