パソナとシェアエコ協会が連携協定、観光で地方創生支援
人材派遣業のパソナと一般社団法人のシェアリングエコノミー協会は11月21日、「地方創生実現に向けた包括的連携協定」を締結した。官民を挙げて観光立国化が推進されるなか、民泊やライドシェアなどに代表されるシェアリングエコノミーのサービスを日本全国に浸透させ、地域の産業振興につなげることがねらい。シェアリングエコノミー協会はパソナが持つパイプを活用して地方自治体とのネットワーク作りなどに、パソナは自治体からのプロジェクト受託や、同協会の会員企業への支援などに取り組む。
同日に開催した発表会見でパソナ代表取締役社長COOの佐藤司氏は、米国などにおけるシェアリングエコノミーの現状などについて説明した上で、「日本にもチャンスはある」と意欲を示した。シェアリングエコノミー協会の代表理事を務めるガイアックス代表執行役社長の上田祐司氏、スペースマーケット代表取締役の重松大輔氏の2氏は、会員企業にはベンチャー企業が多く、地方自治体とのパイプを作りにくい状況にあることを説明した上で「パソナとの連携は非常に嬉しい」と謝意を示した。シェアリングエコノミーにおける起業家の育成には、パソナグループのノウハウやファンドも活用する。
両者は今後、既存の行政サービスにシェアリングエコノミーサービスを取り入れた「シェアリングシティ構想」を日本全国で推進する考え。地域に眠る空間や乗り物、労働力などさまざまな遊休資産を洗い出し、シェアリングサービスに活用して提供することで、新たな雇用と経済効果を創出するという。例えばいわゆる「シャッター商店街」なども地域のユニークベニューとして観光に活用するほか、アクティブシニアなどを新たな人的資源として捉えて観光ガイドなどに育成する。2018年3月末までの目標として、全国の20自治体と「シェアリングシティ化プロジェクト」を推進するという。
シェアリングエコノミー協会は今年1月に設立したばかりの団体で、現時点の会員数は125。一般会員としては、ソーシャルメディア関連事業などおこなうガイアックス、レンタルスペース仲介のスペースマーケットに加えて、Airbnb、HomeAway、Uber Japanなども加盟している。そのほか、賛助会員としてジェイティービー(JTB)やエイチ・アイ・エス(HIS)、ANAホールディングスなどが参加している。
会見では、Booking.comの前日本地区リージョナル・マネージャーで、今年6月からパソナの地方創生特命担当スペシャルアドバイザーを務める勝瀬博則氏が、同社グループの地方創生事業について説明。「パソナは人材派遣のイメージが強いが、地方創生にも非常に力を入れている」と強調し、観光関連のベンチャー企業を支援する「東北未来戦略ファンド」や、京都府からの受託により運営している道の駅「丹後王国 食のみやこ」などの取り組みを紹介した。
パソナは今年11月に、全国の自治体や観光協会、DMOなどを対象に訪日旅行ビジネスを支援する「観光立国ソリューションサービス」を立ち上げ、観光人材の育成やプロモーションなどの支援サービスを強化したところ。勝頼氏は今年4月に経済産業省がまとめた「新産業構造ビジョン」を参考に、将来的には多くの人々が複数の職業によって収入を得るようになるとの見通しを示した上で、「シェアリングエコノミーの活用で多様かつ柔軟な働き方を推進する」と同社の方針を説明した。