学生団体と業界が議論、学生目線の観光振興策も-ツーリズムEXPO
日本観光振興協会(日観振)と日本学生観光連盟(学観連)は先ごろ、ツーリズムEXPOジャパン2016の会場で、3回目となる「産学連携ツーリズムセミナー」を開催した。第1部では、日観振主催のコンテストで事前審査を通過した4校の大学が、「観光振興のための方策」に関する研究発表を実施。第2部では、業界関係者によるパネルディスカッションを開催した。
主催者として挨拶した日観振副理事長の久保田穣氏は「今後のツーリズム分野において人材力は重要になってくる。皆さんに、今後のツーリズム界を支える大きな力になって欲しい」とコメント。学観連代表を務める東海大学観光学部3年生の川口隼人さんも、「実際に現場で活躍されている方と、観光人材に関して議論できるのは大変意義のあること」と語った。
また、来賓として挨拶した国土交通省観光庁観光戦略課調査室長の齊藤敬一郎氏は、「今回のツーリズムEXPOには、菅(義偉)官房長官も視察に来られた。それほど、国の戦略として観光が注目されている証拠」と説明。また、「観光は国際交流を拡大することもできる。若い頃から国際交流をすると視野がとても広がるので、ぜひ観光という切り口から世界の人と交流してほしい」と呼びかけた。
▽学生考案の観光施策、「ロングテーブル」と「グランピング」に評価
第1部の研究発表のテーマは、観光を学ぶ学生の視点から考えた新たな観光施策。今年度は約40チームから応募があり、研究発表の結果、最優秀賞は山口県立大学国際文化学部文化創造学科3年生の「歴食をたのしむ『一味同心』プロジェクト~街道をロングテーブルでおもしろくする~」が選ばれた。
このプロジェクトは、重要伝統的建造物群保存地区となっている山口県柳井市の白壁通りにおける観光施策。長さ30メートルのテーブルを設けて18世紀の正月料理を再現した「歴食」を提供することで、地域の活性化をはかろうとするもの。審査員からは「具体的かつ明確で説得力があった。全国へ広げられる可能性を感じた」と評価された。
また、優秀賞には摂南大学経済学部経済学科の「郷土愛が創る!温もりあふれる自然のホテル『グランピューラ』」が選出された。このアイディアでは、客室のキャパシティ不足が課題となっている和歌山県由良町で、課題解決に向けてアメリカ発祥のキャンプ型宿泊サービス「グランピング」を提供。グランピングと由良町をかけて「グランピューラ」と名付けたといい、審査員からは「実現可能性が高い。もう少し詳細な試算ができていたらとても良かった」とのコメントが挙がった。
▽人材育成をテーマにパネルディスカッション、「チームワーク」が重要
第2部のパネルディスカッションでは、「観光大国実現のための必要とされる人材」をテーマに、日本航空(JL)執行役員の柏頼之氏、オリエンタルランド執行役員の金木有一氏、JTB総合研究所執行役員の波潟郁代氏、学観連の川口さんが議論した。
求める人材像について、柏氏は「グループ会社社員の全員が同じ個性だと面白くない。一人ひとり違った個性が欲しい」とコメント。ただし、「個性や役割はそれぞれ異なっても、全社員が1つの目標に向かって進んでいくので、仲間意識が必要」とも述べた。
金木氏も、「テーマパークはチームワークが欠かせない要素。ただ、そのなかで(多くのお客様を受け入れるために)幅広い視野は必要」と説明。波潟氏は「旅行だけでなく、社会の課題をビジネスチャンスとして捉えられる人」と話した。
これらを踏まえ、川口さんは「近年、文系の観光学部はあまり需要がないと聞くが、実際はどうなのか」と質問。これに対して、柏氏が「観光学部生は地域と人を好きな子が多い。そのような人は我々が求めている人材」、金木氏が「観光という切り口のなかで幅広い勉強をされている皆さんは貴重な存在」と回答し、波潟氏は「今後、観光業をめざす皆さんには、日本の歴史や食などテクノロジーでは代用できないものを見る目を養ってほしい」と呼びかけた。
※訂正案内(編集部 2016年11月1日15時50分)
日本観光振興協会の略称を誤って表記しておりました。お詫びするとともに訂正いたします。