旅館は「日本文化の体現」、地域で訪日客にアピール-EXPOから
外国人が感じる「異文化」を理解し
旅館の魅力を活かしたサービス提供を
地域全体で誘客し連泊・リピーター増へ
相性の良い国を選んでアピールを
シンポジウムの後半では、旅館と地域の連携や、持続可能な誘客の取り組みについてパネルディスカッションを実施。亀清旅館のタイラー氏は、地域の飲食店や観光施設と連携し、英語版のイラストマップや観光情報サイトを作成したことを紹介。これまでは訪日外国人旅行者が地元の小さな飲食店や観光地を訪れることは難しかったが、作成後は旅行者が自由に街を散策できるようになったため、亀清旅館では連泊や延泊をする外国人が増加したという。
ホテル祖谷の植田氏は、2000年に周辺の宿泊施設4軒とともに「大歩危・祖谷いってみる会」を設立したことを紹介。現在は観光施設やバス・タクシー会社、酒造会社などの協賛会員27社のほか、徳島県西部総合県民局など自治体の関係部署や、地域連携DMOとして候補法人に登録された「そらの郷」とともに、国内での商談会や海外でのプロモーション、ファムツアーの実施など、地域一帯となった営業活動をおこなっているという。
同会の設立から現在までの活動により、加盟する5軒の宿泊施設の外国人宿泊客は大幅に増加。15年は59.8%増の9884人となり、県全体の宿泊者数である5万7680人の約17%を占める結果となった。植田氏によると外国人宿泊者のうち7割がアジア、3割が欧米豪からの旅行者だという。
植田氏は持続可能な誘客について、「宿泊者数を求めすぎるのはよくない」と述べ、「祖谷は香港からの旅行者が多い。そのような相性の良い国や地域をターゲットに、地域と連携してプロモーションを進めたい」との考えを示した。植田氏によると、香港の旅行者は「すでに何度も日本を訪れたことがあるリピーターが多く、レンタカーを使用する人が多い」という。そのため、「ゴールデンルート以外の地方にあり、車で巡りやすい広さの四国にある祖谷との相性が良かったのでは」との見方を示した。
JTBグローバルマーケティング&トラベルの水谷氏は「今後はますます旅行会社の存在意義が問われるようになる」と述べ、持続可能な誘客への取り組みについては「旅館と相性の良い国・地域をマッチングしていくことが旅行会社の役目」と強調。海外での商談会の開催や、海外の旅行会社向けのファムツアーの実施などを通じて、「海外における日本のファンを増やしていきたい」と意欲を示した。
観光文化研究所の井川氏は訪日外国人旅行者ばかりを増加させることは、国内旅行のリピーターの減少につながることや、経済状況が悪化した場合のリスクが大きいことなどを指摘。持続可能な誘客として、国内旅行と訪日旅行の数のバランスの重要性を強調した。また、井川氏は「訪日外国人旅行者を誘客したいのであれば、まずは自身が海外旅行に行くべき。外国人として旅行することで得られる気づきがある」と述べ、経験を活かした継続的なサービスの向上を呼びかけた。