訪日4000万人時代に向け持続可能な観光を-ツーリズムEXPO
アクセシビリティの改善や危機管理が重要
DMO活用で地方に誘客
このほど開催された「ツーリズムEXPOジャパン2016」のグローバル観光フォーラムでは、「輝き続ける日本、そして世界-インバウンド4000万人時代の交流大国をめざして」をテーマに、基調講演とパネルディスカッションがおこなわれた。フォーラムの冒頭で登壇した、モデレーターを務めた首都大学東京特任教授の本保芳明氏は、「日本が世界とともに歩むためには世界の観光の現実を知り、その潮流に乗ることが必要」と語り、重要なキーワードとして「サステナビリティ(持続可能性)」を挙げた。その上で「観光の持続的な発展のためには、デスティネーションがどのような役割を果たし、何をするかが重要」と訴えた。
首都大学東京特任教授 東京工業大学特任教授 本保芳明氏
パネリスト
国連世界観光機関(UNWTO)事務局長 タレブ・リファイ氏
世界ツーリズム協議会(WTTC)理事長 デイビッド・スコースィル氏
日本旅行業協会(JATA)会長、WTTC副会長 田川博己氏
エティハド航空(EY)副社長 ヴィジャイ・プーヌーサミー氏
フランス観光開発機構 ジェネラル・マネージャー クリスチャン・マンテイ氏
ツーリズム産業の責任を強調
観光で世界に貢献
フォーラムではまず、UNWTO事務局長のリファイ氏とWTTC理事長のスコースィル氏がそれぞれ基調講演を実施した。リファイ氏は国連総会が来年を「開発のための持続可能な観光の国際年」に定めたことに言及。訪日外国人旅行者が年々増加するなかで「ツーリズム産業の成長とともに責任が生まれる。責任があるからこそ、持続可能な観光が重要」と語り、ツーリズム業界全体で取り組むべきと主張した。
持続可能な観光推進のためには「全ての人が観光できるようなアクセシビリティが必要」との考え。リファイ氏は世界の人口のうち15%の人々が障がいや高齢などによるハンディキャップにより簡単に旅を楽しむことができないことを説明し、「彼らの旅行というビジネスチャンスを失うことは、倫理的にもビジネス的にも誤り」と話した。その上で、全ての人の旅行を実現するためには、公共交通機関や宿泊施設などの「旅行中に利用する全てのサービスでアクセシビリティを浸透させる必要がある」と述べた。
スコースィル氏は、ツーリズム産業が世界のGDPの約10%を占め、2億8400万人の雇用を生み出していることを説明。UNWTOの予測で、全世界の海外旅行者数が30年に18億人、35年には20億人となる見込みであることに触れ、「旅行は社会発展の原動力になるため、我々は大きな責任を担っている」と語った。さらに、「ツーリズム産業が栄えるのは暴力が少ない時代。観光の持続可能な発展は社会平和に貢献できる」と話した。
パネルディスカッションではエティハド航空(EY)のプーヌーサミー氏が、「旅行会社や航空会社、観光局などの全てのステークホルダーが一丸となってシナジーを創出し、共通のビジョンを持つことでツーリズム産業を成長させることができる」とコメント。JATAの田川氏は「バリアフリーのようなアクセシビリティは国や地域に頼るケースが多いが、民間やDMOもアクセシビリティを推進する母体にならなければならない」との考えを示した。