週間ランキング、1位はフィンエアー、クーデター未遂やテロも
[総評] 今週1位は、フィンエアー(AY)と日本航空(JL)、フィンランド政府観光局が6月に実施した大型研修旅行のレポートでした。2位の星のや東京の開業や、3位のアシアナ航空(OZ)が設立したLCCの日本就航などを抑えて1位になるとは思っていませんでしたが、個人的には文中の「フィンランドのおじさんになる方法」などユニークな気付きをくれた記事でした。
とはいえ1位の関係者の皆様には失礼ながら、どうしても2位の星のや開業の方が気になります。というのも、ラグジュアリーホテルで働いていたことがあり、さらに現在は出張などで利用させていただく機会も増え、そして当然ながら旅行業界誌としての興味もあるためで、革命児とも称される星野佳路氏のマイルストーンがどのような形で結実しているのか非常に興味があります。
「Ryokan」の認知度向上と利用促進は観光立国を進める上で不可欠で、観光庁も今年からWiFi整備や多言語化の費用の一部を支援する事業を始めています。とはいえ、畳に敷いた布団で寝ることや浴場のマナーなどハードルも低くなく、場合によっては他の宿泊客が迷惑をこうむる場合もあるため、ある程度経営が成り立っている施設ですと二の足を踏むことも多いのではないでしょうか。
正直なところ、5年後も10年後も安泰ということであれば日本市場に特化して営業するのも一つの経営判断ですし、周囲がとやかくいうことではないように思います。ただし、いつかそうしなければならない可能性があるのであれば、他社に先んじて取り組みをはじめておく、そうでなくてもせめて備えておく方が良いことは間違いありません。
ところで、備えという意味では、今週5位と6位に入ったトルコのクーデター未遂とニースのテロのような事件への準備がますます不可欠になっています。これまでは、何か大きな事件が起きてもしばらく我慢すればほとぼりが冷めて、それを受けてリカバリーキャンペーンを、というようなパターンがあったように感じますが、ここしばらくの世界を見ていると何かが決定的に変化しつつあるような印象です。
うまく言葉にはできませんが、各国で極端な発言や行動が支持を集め、同時にその極端さにマイナスを乗算したような真逆の極端さも生まれてくるような状況で、理由が読めないことが多すぎます。
良い判断には他者の心の内を見通そうとする想像力が重要ですが、最近は「いくらなんでもさすがにこうだろう」という最低限の基準のようなものが通用しなくなっています。世界が変わってきているのか、それとも元からそういうものだったことにようやく気付いてきただけなのか分かりませんが、今までの物差しはそろそろ捨てなければならないのかもしれません。
21日にジェイティービー(JTB)代表取締役会長の田川博己氏が話されていましたが(リンク)、テロや難民の問題は世界の観光産業関係者の中で一番の関心事となっているそうです。日本でも心配はされているわけですが、突き詰めれば対岸の火事であり、海外の方々と感覚を共有できてはいないでしょう。ということは、特にインバウンドではお客様が旅行中に心もとないと思われる可能性もあります。
目の前に広がる世界の中で何を基準にどう行動すべきか、個人としても社会人としても、一人ひとりが真剣に考えていかなくてはなりません。(松本)
▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2016年07月15日0時~07月22日16時)
第1位
◆現地レポート:フィンエアー、2年目の大規模ファム(16/07/19)
第2位
◆「星のや」が初の東京開業、星野氏「旅館の世界進出を」(16/07/20)
第3位
◆アシアナLCCのエアソウル、10月から日本就航-高松など7路線(16/07/18)
第4位
◆全日空のコールセンターが通話記録を紛失、情報流出か(16/07/19)
第5位
◆トルコでクーデター未遂、外務省は渡航中止要請-各者の対応(16/07/19)
第6位
◆米国、羽田線昼間枠の配分を仮決定、新たにDLミネアポリス線(16/07/21)
第7位
◆ニースで群衆にトラック、100人超死傷-ツアーへの影響は軽微(16/07/15)
第8位
◆菅官房長官、20年訪日4000万人「間違いない」、政治主導で推進(16/07/20)
第9位
◆楽天トラベル、夏の九州はふっこう割で好調-クーポン追加も(16/07/19)
第10位
◆JTB、5月の海外旅行は12.4%減、企業が10%増(16/07/18)
※除外した記事(本来は10位以内にランクイン)
◆タイ・バンコク、8月06~07日、国民投票のため「禁酒日」に(16/07/15)