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政府、九州回復へ支援プログラム、旅行商品に割引助成

  • 2016年5月31日

 政府が「明日の日本を支える観光ビジョン」の推進に向け創設した「観光戦略実行推進タスクフォース」は5月31日、「九州の観光復興に向けての総合支援プログラム」を取りまとめた。4月に地震により被害を受けた九州観光の復興に向けて、今後取り組む施策を示したもの。政府はすでに応急的な対策として、宿泊施設などの直接・間接的被害に対する支援に着手しているが、さらに短期的対応として「割引付旅行プラン助成制度」の創設など、中長期的対応として観光施設や文化財の早期復旧などを進める。

 同プログラムは「熊本地震復旧等予備費」として2016年度補正予算に計上していた7000億円のうち、1023億円の用途を閣議決定したことを受けて策定。このうち「当面の観光需要回復に向けた短期的対応」では、夏休みや秋以降の国内外の旅行需要の早期回復と創出に向け、「九州観光支援のための割引付旅行プラン助成制度」を新設し、予備費のうち180億円を充てる。

 同制度では九州7県に対し、旅行会社などの支援に充てる費用や、キャンペーン費用を助成するための交付金を交付する。県や九州観光推進機構は、旅行会社やOTAなどに同制度を活用した商品の造成・販売や観光プロモーションを依頼。旅行会社は商品を造成後、消費者に割引価格で販売する。販売実績は県などに報告し、割引分を助成金として受け取る。

 割引率については、旅行会社が目玉商品用に思い切った料金設定をおこなえるよう、熊本県と大分県については7月から9月までは平均50%、最大70%、10月から12月までは平均25%、最大50%とする。他の5県は7月から9月までは平均20%、最大50%で、10月から12月までは平均10%、最大40%までとした。

 1人あたりの割引上限額は、宿泊のみの旅行商品が予約1件につき2万円まで。交通付き宿泊旅行商品は1泊2日の場合は1人2万円まで、2泊3日以上は1人3万円までとする。2県以上で2泊3日以上の周遊型宿泊旅行商品は、1人3万5000円までとした。

 また、助成制度にあわせて、日本政府観光局(JNTO)や日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)などと連携し、国内外で大規模なプロモーションやキャンペーンを実施。経済産業省が中心となり展開する九州の物産などの海外への発信事業に、予備費のうち20億円を充てることなども決定した。

 中期的対応では、被災した観光施設などを原型に復旧するだけでなく、国内外の観光客にとってより魅力的なものとなるよう、景観や安全面の向上にも取り組む。具体的には、熊本城などの早期復旧支援に加え、景観に関する専門家を九州に派遣。景観計画の策定を支援し、従来よりも優れた観光地となるようにする。

 そのほか、現在実施している応急的な取り組みもさらに拡充し、熊本県と大分県における宿泊施設の復旧に対する補助として「中小企業等グループ補助金」を創設。被災した中小企業などのグループが作成した復興事業計画に基づき、復旧費用の4分の3または2分の1を補助する。復興事業計画の公募は6月中に開始する予定。