豪州、座席増追い風に、持続可能な回復めざす
1月~3月で日本人3割増
回復へ「ラストチャンス」の覚悟求める声も
日本人訪問者数が長く続いた落ち込みを脱し、2016年第1四半期には26.6%増の11万500人と急増しているオーストラリア。航空座席の大幅増が大きな追い風となっているが、これから考えるべきはこの勢いをいかに持続し伸ばすか。5月16日から19日までゴールドコーストで開催された商談会「AUSTRALIAN TOURISM EXCHANGE(ATE)」では、久しぶりの活況を喜ぶ声とともに、未来志向の意欲が多く聞かれた。
▽オーストラリア政府観光局
15年、日豪間では8月にカンタス航空(QF)が成田発着であったシドニー線を羽田に振り替え、その代わり成田からはブリスベン線をデイリーで就航。さらに12月には全日空(NH)も羽田/シドニー線を開設した。
オーストラリア政府観光局本局局長のジョン・オサリバン氏は、こうしたFSCの就航が市場を牽引していると分析し、「他の路線開設の可能性も聞こえてきており、大変喜ばしい」とコメント。座席以外でも日豪経済連携協定(EPA)や、日本旅行業協会(JATA)との連携など旅行業界向けの活動も功を奏したという。
旅行業界に対しては、リニューアルしたeラーニング「オージー・スペシャリスト・プログラム(ASP)」の受講促進や日本での商談会開催などの働きかけを継続。また、プロモーションでは、水辺や海岸の魅力を伝えるグローバルキャンペーン「アクアティック&コースタル」を、日本でも今年後半に開始する方針だ。
なお、日本事務所では日本局長が4月に退任し後任が決まっていないが、オサリバン氏によると「現在選定中で、できる限り早く選びたい」ものの、「相応しい人物であることのほうが重要」で、年内の決定をめざしている。
▽クイーンズランド州
クイーンズランド州政府観光局の西澤利明氏によると、QFのブリスベン線が順調。15年8月から16年4月までの平均利用率が84%を超え、90%以上も2ヵ月あり、ビジネスクラスも売れている。さらに日本人が45%、オーストラリア人が48%と理想的なバランスとなっているという。
ただし西澤氏はこうした好調さを歓迎しつつも、欧州の政情不安が払拭された時点で勢いを失っていれば「リカバリーの機会はもう来ないのではないか」と失速の可能性を強く懸念。それを避けるために、TAと各州・地域、航空会社、旅行会社が協力し、棲み分けをしてプロモーションを展開していく必要があると訴えた。
なお、15年の州全体の日本人訪問者数は16万5000人であったが、16年は「少なくとも20万人に届く」見通し。FSCばかりでなくジェットスター航空(JQ)の調子も良いといい、増便の可能性もあるという。
▽ゴールドコースト
15年のゴールドコーストへの日本人訪問者数は5%増となったが、ゴールドコースト観光局の小林芳美氏は「16年は保守的に見て30%増、7万人程度はいかないといけない」と意欲を語る。
同局では、久しぶりのFSCの直行便であるQFのブリスベン線を活用してハネムーンやMICE需要の回復に取り組み、順調に進んでいる。旅行会社からはパッケージやメディアシリーズの復調が聞こえているといい、さらにMICEもすでに15年実績の2500名規模は確実となり、積み増しに期待がかかっている。
今後はさらなる増便をめざし、引き続きトラムや各種の再開発など新しいプロダクトのアピールや、「1時間で行ける、歩ける世界遺産」としてゴンドワナ多雨林の認知拡大に取り組む。旅行会社側の販売意欲の高まりも肌で感じるといい、セミナーやFAMツアーなどを引き続き計画していく。
▽ケアンズ
トロピカル・ノース・クイーンズランド観光局(TTNQ)の坂本統氏によると、15年は日本人訪問者数が「久しぶりの9万人台」に達し、今年の1月から3月も最大20%の伸び。オーストラリア全体の伸びは下回っているが順調な回復との評価で、当面の目標である年間10万人回復も無理に達成をめざさず持続可能性を重視していく。
日本市場向けには予算を「かなり増やしている」ところ。7月以降の来年度も今年度と同程度を見込み、日本人訪問者の78%が旅行会社経由であることから、従来通り業界向けの活動を最重視する。例えばセミナーの際にFAMツアー参加者に登壇してもらうなど新たな試みも始めている。
また、「ファーストタイマーで20代」のコアターゲットに加え、50代以上の層とリピーターとがそれぞれ約3割のシェアを占めていることから、ツアー内容の多様化もめざす。さらに、パームコーブなど市の中心部以外への送客も課題で、「ケアンズとしてのブランディング」に取り組んでいく。星空も新たな魅力として打ち出すという。