ドイツ、日本回復に向けプロモ強化、周辺国とも協力-GTM2016
都市と自然の組み合わせを訴求
今夏にはオーストリアやスイスとセミナーも
16年は自然と周年イベントで日本市場を底上げ
GTNBでは、今年は新たなプロモーションテーマを設定し、日本市場の底上げをねらう。まず注力するのが自然。ケッテルハーケ氏はインタビューのなかで、「日本人旅行者にはヨーロッパの人々のような休暇の過ごし方は難しいので、戦略を変えた。都市と自然を組み合わせ、町から周辺の自然へのデイトリップを提案していく」と明かした。
同氏はその具体例も紹介。「たとえばドレスデンでは100年以上前の蒸気船に乗りながら川沿いの古城を眺め、船上でワインを楽しむ。フランクフルトでは、ウエストフランクフルトのワインの産地『ラインガウ』を訪れ、中世の修道院が多くの残り、映画『薔薇の名前』の舞台にもなった地域を巡ることもできる」とアピールする。
また、創立800周年を迎えるドレスデンの聖十字架教会合唱団をフックに、ドイツのクラシック音楽をSIT向けに訴求していく。「音楽専門のオペレーターとも協力し、毎年開催されているバッハ、ベートベン、モーツァルトなどのフェスティバルも訴求していきたい」考えだ。
来年はバイエルン公国のヴィルヘルム4世がビールの原料をホップと麦芽と水のみに定めた「ビール純粋令」の制定から500周年にあたることから、「ビール大国ドイツ」もアピールしていく。「ドイツにもさまざまなタイプの醸造所がある。ビールは知らない人同士を結びつけるもの。日本人にもきっと楽しめるはずだ」と期待を寄せる。
このほか、17年はマルティン・ルターがローマ教会に抗議してヴィッテンベルク市の教会に95ヶ条の論題を打ちつけた、いわゆる宗教改革から500周年を迎えることから、観光の訴求ポイントとして取り上げていく方針。GNTBディレクター・マーケティングの西山晃氏によれば、日本では宗教よりも歴史的意義に焦点を当てるとともに、当時のヨーロッパの思想の巨人であり、自ら賛美歌を作るなど後世の音楽にも多大な影響を残したルターの人となりも紹介することで、旅行需要につなげていきたいという。
GNTBでは、旅行会社やメディアとの協業に加えて、ソーシャルメディア、ブロガーなどを活用してさまざまな形で露出をはかりながら、プロモーションを展開。また、ケッテルハーケ氏によればドイツを訪れる日本人うち70%がオンラインで情報収集し、50%がオンラインで予約していることから、今年はスマートフォンでのキャンペーンを初めて実施する予定だ。
今夏に周辺国観光局と共同でセミナー実施
ドイツに限らずヨーロッパへのレジャー市場は苦戦が続いている。そのような情況のもと、オースリア航空(OS)は今年9月に日本路線から撤退することを表明。GTM2016に参加した旅行会社からは、「ヨーロッパ線の座席確保で影響は避けられないだろう」との声も聞こえる。
ルフトハンザ航空(LH)やスイス・インターナショナル・エアラインズ(LX)が座席を増やす可能性があるが、LHの羽田線については、訪日旅行の需要が増えているため、アウトバウンドの座席が出にくい状況にあるという。また、LOTポーランド航空(LO)の成田/ワルシャワ線も好調で、さらなる座席確保も難しいようだ。10月からはイベリア航空(IB)が成田/マドリード線を再開するものの、「ヨーロッパ線での座席確保は苦労が続くかもしれない」と吐露する旅行会社もいた。
こうしたなか、GNTBは日本独自の取り組みとして、周辺国の観光局との共同プロモーションを計画している。今年8月22日には大阪でオーストリア観光局と、翌23日には東京でオーストリア観光局およびスイス観光局と共同で、それぞれ旅行会社向けのイベントを開催するほか、今秋にはメディア向けのワークショップも計画している。ケッテルハーケ氏は「各観光局とも予算が限られているなか、ヨーロッパを1つのデスティネーションとして共同で訴求していきたい」と新たな取り組みに意欲を見せる。