エジプトセミナー開催、回復に向け安全対策などアピール
エジプト専門のランドオペレーターであるバヒトラベルはこのほど、エジプト政府観光局の協力のもと、下期商品の造成の時期にあわせて、旅行会社向けの「エジプト・アップデートセミナー」を実施した。本誌の取材に応えた同社東京事務所営業マネージャーの田代玲子氏は、2011年のアラブの春以降低迷している日本人のエジプト旅行について、「現在は治安部隊の活動により状況が安定してきているが、訪問者数の回復傾向は見られていない」と説明。その上で「今年のゴールデンウィークにかけて実施される、チャーター便を利用したエジプトツアーには、1000人以上の申し込みがあると聞いている。(アラブの春から5年以上が経過し)エジプトへ行きたいと考えている人が増えてきているのでは」と期待を示した。
同ツアーは、エジプトなどの地上手配をおこなうプラネットツアーサービスが企画したもので、エジプト政府などの協力のもと、同国のナショナル・アビエーション社が運航するチャーター便4往復を利用して、4月と5月にエジプトを訪れる。使用予定機材はエアバスA340-200型機で、座席数はファーストクラス12席、ビジネスクラス24席、エコノミークラス224席の計260席。出発日は4月が23日と30日、5月が7日と14日で、出発地は成田と関空。6泊8日でカイロ、ルクソール、アスワン、ギザなどの主要な観光地を訪れるという。
田代氏は、現在はアラブの春以前と比べて、旅行商品数が1割程度にまで減少していることを説明し「旅行会社の店舗にはまだまだパンフレットが置かれにくい状況」とコメント。しかし、チャーター便によるツアーが成功し、エジプト旅行が回復に向けて動き出しつつあることが業界内に伝われば、旅行会社による商品造成も増加するとの見方を示した。商品数や日本人訪問者数の回復が本格的に始まる時期については、「17年の下期からになるのでは」と語った。
そのほかには、13年から日本路線を運休しているエジプト航空(MS)についても言及し、「需要が足りないままでは直行便の再開は難しい」と述べた一方、「(カイロ/北京線など)中国路線を延伸する形であれば、訪日需要で採算が取れるので、再就航の可能性があるのでは」との見方を示した。なお、MSの日本総代理店(GSA)を務めるレジェンドリーグスによると、「現時点で日本路線への就航についての計画はない」という。
エジプト政府観光局の統計によると、14年の日本人訪問者数は前年比61.5%減の1万2000人で、15年については確定値は発表されていない。なお、同観光局の日本事務所は14年12月に閉鎖し、翌年8月からフォーサイト・マーケティングに委託する形で運営を再開したが、16年2月末で契約は終了しており、現在は日本には観光局がない状態にある。
セミナーでは、田代氏がエジプトの観光地やホテルなどにおける警備体制について紹介。主要な施設では荷物検査やIDチェックがおこなわれているほか、街中では警官や軍人に加えて、私服警察や覆面パトカーによるパトロールもおこなわれていることを伝えた。また、カイロ、ルクソール、ギザの3都市には「セキュリティーセンター」が置かれ、各都市100台以上の監視カメラで厳重な監視体制が敷かれていることも説明した。
外務省の危険情報でレベル2に指定されているアレキサンドリアについては、今年2月に円借款による空港拡張計画が策定され、今後は拡張工事に伴う日本人技術者の派遣などが予想されることから、危険度の引き下げがおこなわれる可能性が考えられることを説明。また、ルクソールの北に位置し複数の遺跡があるケナについても、遺跡周辺地域のレベルの引き下げられる可能性があることを示唆した。
新たな観光素材としては、18年5月にソフトオープンする予定のギザの「大エジプト博物館」を紹介。同館は約10万点のエジプト考古遺物を展示・収蔵するもので、22年のグランドオープンを予定する。駐車場からは周辺の観光地を周るシャトルバスの運行も計画されており、将来的にはギザの3大ピラミッドとあわせた観光もできるようになるという。